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住宅取得資金贈与の注意点

令和4年税制改正において、住宅取得資金贈与の適用対象が令和5年12月31日までに延長されました。しかし同時に贈与税の非課税枠が減額され、岸田政権における『贈与税と相続税の一体化』の考え方の一端を感じました。
今後暦年贈与が認められなくなる可能性も考慮されている中、非課税枠に含められた金額を相続税の計算上考慮しなくてもよいとする同法の検討は、未だ大きな意味を持つものと考えます。そこで今回は住宅取得資金贈与の適用を受けるにあたり、迷いやすい論点を私の体験をふまえて考えていきたいと思います。

工事の完了の定義

住宅を新築する場合、贈与を受けた者は贈与を受けた年の翌年3月15日までに、その工事を完了させる必要があります。新築には、新築に準ずる状態として、屋根(その骨組みを含みます。)を有し、土地に定着した建造物として認められる時以後の状態が含まれます。

私が担当した案件では、話が持ち上がった段階で原材料の不足が見込まれている状態であり、かつ施工時期に台風の時期を含んでいることから、翌年の3月15日までに新築に準ずる状態に確実に達せるかどうかが見通せませんでした。このため、贈与者・受贈者・施工業者と何度も打合せを行い、贈与の実行と工事の施工を翌年とし、余裕をもって適用を受けることとしました。

住宅取得の原資について

住宅取得資金贈与とは、その名の通り住宅を建てるためのお金を贈与により取得し、そのお金で住宅を建築、取得した場合に適用を受ける規定です。このため、自分のお金で住宅を建築して、後からお金を貰った場合には、結果としては同じでも適用対象とはなりません。

また共有で住宅を取得された場合には、贈与により取得した部分のみ、適用が受けられることとなります。共有での取得をご希望された場合には、最初のご面談の時点で、贈与の事実を示すための贈与契約書、受贈者の通帳への振込日、施工開始日といった時期的な注意点と通帳に振り込まれた金額、登記簿謄本に記載された出資割合、登記簿上の床面積といった数字上の注意点を、分かりやすくお伝えできるよう取り組んでおります。

添付書類

住宅取得資金贈与においては、一定の基準を満たした場合、贈与税の非課税額が500万円増額されます。この基準を満たしているかどうかの確認のために、添付しなければならない書類が明記されています。ただこの書類の名称は、マイホームという一生に一度あるかどうかという観点から考えると、馴染みのない名称で、受け取った書類の名称が正確に一致していないことも多く、非常に悩むところです。また書類の発行時期も施工前と建築完了後で異なり、目的の書類を発行できないタイミングもあります。私は悩んだら、まず施工業者へ明記されている書類名をそのまま送り、このうち発行できる書類があるかどうかを尋ねるようにしています。その書類で基準を確認したら、建築完了後に、建築完了後に発行される書類を改めて要求、精査し、添付書類として提出するようにしております。

上記以外にも住宅取得資金贈与の適用には、様々な落とし穴があります。私自身、何度かご対応をさせていただいておりますが、申告書の内容は必ず複数名でチェックを行ってもらい、ミスの防止に努めております。相続対策として非常に有効な制度ではありますが、その反面一度でも間違えてしまった場合には影響を受ける金額も大きくなる制度です。今後税制がどのように改正されていくとしても、ご自身の財産を上手くご家族に残していくために、引き続きのご検討を行っていただければ、税務に携わる一会計人として嬉しく思います。

渋谷事務所
秋葉 靖文

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