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贈与したつもり~名義預金にご注意を~

新型コロナ感染症が2023年5月から5類感染症に移行され、税務調査の件数も増えてきているようです。
相続税の調査において、預貯金の申告漏れの割合は30%超となっています。
この中には名義預金も相当数含まれており、相続税調査で妻や子、孫名義の口座が名義預金と認定された場合、相続財産に加算され、本税の他に加算税や延滞税が課税されることになってしまいます。
相続税において名義預金と認定されないためには、正しい贈与を行うことが必要です。

1.贈与の意義

民法549条において「贈与は、当事者の一方がある財産権を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。」と書かれており、当事者双方の意思があって初めて成立するものです。
また、その財産の支配権が貰った側に移ることも必要です。

2.名義預金とは

 名義預金とは子や孫に贈与した「つもり」だったものの、法的にはいまだ祖父母や父母の財産と認定されてしまう預金のことを言います。
具体的には毎年こつこつと子や孫名義の預貯金口座にお金を振り込んだものの、その振込みが一方的で、名義人である子や孫がその存在を知らないか、知っていてもその管理は贈与した祖父母や父母が行っており、貰った子や孫が自分の意思で自由にできない状態にある預貯金が名義預金にあたります。
また、夫が妻に生活費を渡し、その残りが妻名義の預金として蓄積されている場合も同様です。

3.正しい贈与の仕方

 贈与契約は口頭でも成立しますが、名義預金とされないため、また、後々のトラブル防止のため、正しい贈与を行いましょう。具体的には次の方法によります。
(1)贈与契約書を作成し、あげる人、貰う人双方が署名捺印することによって、贈与の意思を明確にしておく。
 ※当事者が未成年者の場合は、親権者の署名も必要。
(2)贈与は通帳間の振り込みで行い、記録が残るようにしておく。
(3)貰った側の通帳及び印鑑、キャッシュカードは貰った子や孫が管理支配する(未成年者の場合は親権者でもよいが、親権者はあくまで管理するだけ)。
 (4)年間110万円超の贈与を受けた場合は、贈与税の申告が必要。
  ※相続時精算課税を選択する(している)場合は、110万円以下であっても申告が必要。
 ただし、令和6年以降の贈与は相続時精算課税制度に110万円の基礎控除枠が設けられ、取り扱いが変わります。

4.名義預金の解消

  名義預金が既にある場合、贈与を成立させるために、ある時点で通帳や印鑑等を子や孫に渡した場合、その時点の残高で贈与が認定されてしまい、多額の贈与税が課税されてしまう可能性がありますので、一度贈与した人の口座に戻し、正式な贈与手続きをやり直すことをお勧めします。
  戻したときに子や孫から父母又は祖父母への贈与と認定されないために、戻した経緯を説明できるようにしておいてください。

長野事務所
土屋

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