使用者が一方的に決めるのはNG!年次有給休暇の計画的付与制度を正しく理解しよう!
年次有給休暇の取得が義務に!
第196回の通常国会において「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が成立したことを受け、2019年4月から、年10日以上の年次有給休暇が付与されている労働者について、使用者は年5日は時季を指定して取得させることが義務付けられました。
働き方改革に関する社会的な関心の高まりを受けて、多くのテレビや新聞などが年次有給休暇の取得義務化について取り上げました。しかし、制度の内容を正しく理解している人はそれほど多くはありません。
経営者や労務担当者の正しい知識と、正しい運用が、会社と労働者とのトラブルを未然に防ぎます。今回は年次有給休暇を計画的に付与するに当たって、事前に準備しておくべきこと、注意するべきことについて整理していきます。
年次有給休暇とは
労働基準法第39条では、6ヶ月継続して雇用されていて、全労働日の8割以上出勤している労働者は、年次有給休暇を取得できると定めています。正社員だけでなく、パートタイム労働者や管理監督者、有期雇用労働者なども対象です。
付与日数は労働基準法で細かく定められており、所定労働日数が少ない労働者に対しては、労働日数に応じた年次有給休暇が付与されます。
年次有給休暇の請求権の時効は2年で、前年度に取得できなかった年次有給休暇は、翌年度に付与されなければいけません。年次有給休暇の取得は労働者の大切な権利なので、使用者は年次有給休暇を取得した労働者に対して、賞与を減額したり、人事評価を下げたりするなど、不利益な扱いをしてはいけません。
年次有給休暇の計画的付与制度とは
年次有給休暇の計画的付与制度とは、使用者が労働者に対して計画的に休暇取得日を割り振り、年次有給休暇の取得を促す制度です。年次有給休暇の保有日数のうち5日を超える分が対象で、残り5日は労働者が自由に取得できるように残しておく必要があります。
この制度を活用することによって、使用者は労務管理がしやすくなり、労働者は気兼ねなく年次有給休暇を取得できるというメリットがあります。
同制度は、全労働者を同じ日に休ませる「一斉付与方式」、班・グループ別に交代で休暇を付与する「交代制付与方式」、夏季や年末年始、労働者の個人的な記念日などを優先的に休ませる「個人別付与方式」の3種類あります。企業は自社に合った方法で運用し、年次有給休暇の取得を促進していくことが推奨されます。
厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署が公開している資料「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」に具体的な活用方法が紹介されているので、参考にしてみると良いでしょう。
計画的付与制度の導入に必要なこと
年次有給休暇の計画的付与制度は、使用者が一方的に導入を決められるものではありません。計画的付与制度を導入するためには、就業規則を改定したうえで、労働者との間に労使協定を結ぶ必要があります。
労使協定を締結する際には、計画的付与の対象者、対象となる年次有給休暇の日数、計画的に付与するための具体的な方法、年次有給休暇の付与日数が少ない人への対応、計画的付与日に変更が必要になった場合の手続きについて具体的に定めておきます。
年次有給休暇の計画的付与制度は、原則全労働者を対象にするべきですが、計画的付与の時期に育児休暇や産前産後休暇を取得することがわかっている人や、退職者については、あらかじめ対象から外しておくと良いでしょう。
まとめ
年次有給休暇の計画的付与制度は、使用者、労働者双方にとってメリットがあり、年次有給休暇の促進に有効だと考えられている制度です。
制度を導入するにあたっては、就業規則の改定と労使協定の締結が必要です。使用者、労働者が納得できるような制度を確立し、働き方改革を進めていくことが推奨されます。
(画像はphoto ACより)