合併した法人の中間(予定)申告
近年、BtoBビジネスにおいてM&Aや事業承継が頻繁に行われており、これらに関連する税務的な論点に携わる機会が増えています。今回は、合併により新設された法人の中間申告について解説します。
合併法人の中間申告は、合併法人の前事業年度の確定税額と被合併法人の前事業年度の確定税額を合算して判断します。
ポイントは「合併のタイミング」により計算式が異なる点です。ただし、合併法人でも基本的に「20万円を超える場合に中間申告が必要となる」点は変わりません。
合併した法人の中間(予定)申告について、主なポイントは以下の通りです:
1. 法人税の中間申告
吸収合併による適格合併が事業年度開始の日から6月の期間内にあった場合には中間申告の金額に変更があるため注意する必要があります。被合併法人の実績も加算した金額を納税する必要があります。
・ 合併法人の事業年度が6ヶ月を超える場合、中間申告が必要です。
・ 予定申告の場合、合併法人の前事業年度の法人税額に被合併法人の前事業年度の法人税額を加算して計算します(法71条、81条)。
・ 計算方法は合併のタイミングにより異なります:
・ 当期の上期に合併した場合
・ 前期に合併した場合
・ 新設合併の場合
2. 計算の基本式
合併法人の前事業年度の法人税額 ÷ 前事業年度の月数 × 6 + 被合併法人分の加算額
適格合併と非適格合併の違い
適格合併と非適格合併では、中間申告の取り扱いに違いがあります。
⑴ 適格合併の場合:
合併法人の中間申告において、被合併法人の法人税額を考慮して計算する特例が適用されます。
⑵ 非適格合併の場合:
上記のような特例計算は適用されません。合併法人は通常の中間申告の規定に従って計算を行います。
これらの違いは、適格合併が税務上の継続性を重視する取引として扱われるのに対し、非適格合併はそうではないことに起因します。適格合併の場合、被合併法人の税務上の地位が合併法人に引き継がれるため、中間申告においてもその影響を反映させる必要があります。
3. 被合併法人分の加算額計算
・ 合併時期や合併形態により計算方法が異なります。
・ 被合併法人の確定法人税額を基に、合併後の期間等を考慮して計算します。
合併法人の前事業年度の法人税額を前事業年度の月数で除し、これに6を乗じて計算した金額に、次の(イ)と(ロ)の区分に応じて、そのいずれかの金額を加算します(1月に満たない端数が生じたときは1月とします)。
イ) 当期の上期(合併法人の当期開始の日から6月以内)に合併した場合
被合併法人の確定法人税額等をその計算の基礎となったその被合併法人の事業年度の月数で除して計算した金額に、その合併の日から当該6月を経過した日の前日までの期間の月数を乗じて計算した金額
ロ) 予定申告の対象となる事業年度の前事業年度に合併した場合
被合併法人の確定法人税額等をその計算の基礎となった被合併法人の事業年度の月数で除した金額に、合併法人の前事業年度の月数のうちにその前事業年度開始の日からその合併の日の前日までの期間の月数を占める割合を乗じ、さらに6を乗じて計算した金額
ハ)新設合併(適格合併)の場合
各被合併法人の確定法人税額をその計算基礎となったその被合併法人の事業年度の月数で除して計算した金額に6を乗じて計算した金額の合計額となります。これにより、新設された法人の最初の中間申告に適切に反映させることができます。
4. 地方税の中間申告
・ 法人税と同様に、被合併法人分の予定申告税額を加算して計算します。
5. 消費税の中間申告
・ 吸収合併の場合、合併法人が消滅法人の納付義務を引き継ぎます。
・ 新設合併の場合、新設法人が各消滅法人の納付義務を引き継ぎ、前期の消費税額に基づいて計算します。
法人税と同様に合併後の法人へ予定納税の義務が引き継がれますが、合併の種類によって中間納付の扱いが異なります。
イ)吸収合併: 消滅法人の消費税の納付義務は合併法人が引き継ぎます。
ロ)新設合併: 新設法人が消滅法人の納付義務を引き継ぎます。新設法人としての最初の年度の中間納付の金額は、前期(合併前の各法人の決算期)の消費税額に基づいて計算されます。
消費税の中間申告については、適格・非適格の区別なく、合併後の法人が被合併法人の納付義務を引き継ぎます。
6. 申告書の記載事項:
適格合併の場合、中間申告書に以下の事項を付記する必要があります。
・ 被合併法人の名称
・ 適格合併の日
・ 被合併法人の確定法人税額とその計算基礎となった事業年度の開始・終了日
■まとめ
合併の際の中間申告納税について紹介しました。一見すると納税のみで完了する手続きと思われがちですが、合併の形態やタイミングにより計算方法が複雑に変わります。合併に関連する中間申告について不明な点がある場合は、コンパッソ税理士法人までご相談ください。
コンパッソ税理士法人
税理士 今山 優太