相続人の中に未成年者がいる場合
共同相続人の中に未成年者がいる場合、遺産分割や相続税の申告にあたりどのような点に留意が必要でしょうか。
1.遺産分割における特別代理人の選任
通常、未成年者の法律行為は法定代理人(一般的には親権者)の同意のもとに行われます。しかし、相続人の中に未成年者がいる場合には、親権者と未成年者である子との間で利害関係が衝突し、利益相反となる場合があります。例えば、父が死亡し、配偶者と未成年者である子との間で遺産分割をする場合などです。
このような場合には、親権者は子のために特別代理人の選任を家庭裁判所に請求しなければなりません。また、未成年者である子が複数人いる場合には、それぞれ別の特別代理人を選任する必要があります。
<特別代理人選任の申立て>
- 申立人 :親権者、利害関係人(子)
- 申立先 :子の住所地の家庭裁判所
- 申立費用:
- 収入印紙800円分(子1人につき)
- 連絡用の郵便切手
- 提出書類:
- 申立書
- 未成年者の戸籍謄本
- 親権者の戸籍謄本
- 特別代理人候補者の住民票又は戸籍附票
- 利益相反に関する資料(遺産分割協議書案など)
2.相続税の未成年者控除
相続税の申告では、相続人が未成年のときは税額控除(未成年者控除)を受けることができます。
未成年者控除を受けられるのは以下3つの要件を満たす人です。
(1) 日本国内に住所がある人(居住無制限納税義務者)、又は、日本国内に住所がない人でも一定の条件に当てはまる人(非居住無制限納税義務者)
(2) 20歳未満である人
(3) 被相続人の法定相続人である人
未成年者控除の額はその未成年者の年齢に応じて計算することとなっており、満20歳になるまでの年数に10万円を乗じて計算します。このとき年数が1年未満の場合は1年とし、1年未満の端数は切り上げて計算します。
3.成年年齢の民法改正
2018年6月13日、民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げること等を内容とする民法の一部を改正する法律が成立しました。
この改正は2022年4月1日から施行されます。
具体的には、2022年4月1日の時点で18歳以上20歳未満の人(2002年4月2日生まれから2004年4月1日生まれまでの人)はその日に成年に達することになり、2004年4月2日生まれ以降の人は18歳の誕生日に成年に達することになります。
また、この民法改正に伴い、相続税の未成年者控除についても、2022年4月1日以降に発生する相続について年齢要件が20歳未満から18歳未満に引き下げられることとなっています。
施行日前後に相続が発生した場合には、未成年者の判定や民法、税法の諸規定の適用について注意が必要です。
高田馬場事務所 篠木市子
<参考・出典等>
掛川雅仁編著「ケース別相続手続 添付書類チェックリスト」 新日本法規出版㈱
最高裁判所HP「特別代理人選任(親権者とその子との利益相反の場合)」
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_11/index.html
国税庁HP「No.4164未成年者の税額控除」
https://www.nta.go.jp/m/taxanswer/4164.html
法務省HP「民法の一部を改正する法律(成年年齢関係)について」
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00218.html