ナレッジ

KNOWLEDGE

  1. HOME
  2. Knowledge
  3. 社会福祉法人
  4. <社会福祉法人>源泉所得税業務 ―外国人労働者―

<社会福祉法人>源泉所得税業務 ―外国人労働者―

近年、社会福祉法人の源泉所得業務は繁雑になってきているのではないでしょうか。
永年勤続者に対する祝金や産業医、嘱託医、講師謝礼は一般的ですが、外国人労働者やWワークと雇用形態も様々ですので、雇用形態により源泉区分も違ってきます。また、このコロナ禍では、新型コロナウイルス感染症に対応した職員に対する見舞金を出したいという相談も多く、源泉所得税の課税、非課税の問い合わせもあります。これらのうち、問い合わせの多い外国人労働者を雇用した場合の源泉所得税について見ていきたいと思います。

外国人介護人材の受け入れには、EPAや技能実習生ほか、在留資格介護や特定技能などもありますが、源泉徴収の対象となる所得の範囲のうち居住者に該当すると、給与所得の源泉徴収税額表により源泉徴収を行うことになります。

源泉徴収の対象となる所得の範囲は、居住者と非居住者の区分で考えます。
居住者と非居住者の区分は、その人が国内に住所を有するか又は国内に継続して1年以上居所を有するかどうかなどにより判定します。技能実習生のうち就労期間が1年を満たない場合もありますが、社会福祉法人の外国人労働者の受け入れは、1年以上がほとんどです。受け入れのための準備や受け入れ後の生活支援等が必要ですので、短期雇用の事例はあまりみません。1年以上の雇用で法人の社宅に住むケースが一般的ですので、源泉徴収の対象となる所得の居住者となり、日本人従業員と同じ通常の源泉所得税の徴収方法なります。

徴収した源泉所得税は、原則徴収した日の属する月の翌月10日までに納付することになりますが、居住者であれば通常の源泉所得税の納付書「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」を使用して納付します。

 ・居住者 給与所得の源泉徴収税額表により源泉所得税を徴収する
     「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」にて納付

 ・非居住者 給与額に20.42%の税率で源泉所得税を徴収する
     「非居住者・外国法人の所得についての所得税徴収高計算書」にて納付

更に、国外に住む家族でも扶養控除、配偶者控除、障害者控除、配偶者特別控除も適用の対象になりますので、国外に住む家族を扶養とする場合は、それを証明する書類を提出してもらう必要があります。

(親族関係書類)
次の①又は②のいずれかの書類で、国外居住親族が居住者の親族であることを証するものをいいます。
① 戸籍の附票の写しその他の国又は地方公共団体が発行した書類及び国外居住親族の旅 券(パスポート)の写し
② 外国政府又は外国の地方公共団体(以下「外国政府等」といいます。)が発行した書類 (国外居住親族の氏名、生年月日及び住所又は居所の記載があるものに限ります。)

(送金関係書類)
次の書類で、居住者がその年において国外居住親族の生活費又は教育費に充てるための支払を、必要の都度各人に行ったことを明らかにするものをいいます。
① 金融機関の書類又はその写しで、その金融機関が行う為替取引により居住者から国外居住親族に支払をしたことを明らかにする書類
② いわゆるクレジットカード発行会社の書類又はその写しで、国外居住親族がそのクレジットカード発行会社が交付したカードを提示してその国外居住親族が商品等を購入したことなどにより、その商品等の購入の代金に相当する額の金銭をその居住者から受領した、又は受領することとなることを明らかにする書類
 
このように提出してもらう書類も多いですし、就労ビザの取得申請には収入証明書類が必要であったりしますので、日本人従業員以上に業務や手続きが煩雑です。ここ数年EPAや技能実習生を受け入れて外国人労働者の雇用を実現しているということは、このような知識を習得し、たゆまぬ努力の結果なのだと感じます。

参考 国税庁HP
令和4年版 源泉徴収のあらまし
国外居住親族に係る扶養控除等の適用について

横浜青簿事務所
佐々木 友美

関連記事