「貸倒損失」について
取引は売上代金の回収が済んで完結となります。しかし、相手方の状況や特に新型コロナ感染症の影響による倒産や取引の停止で回収不能となる場合も出てきます。このような場合の処理「貸倒損失」について考えてみます。
まず債権回収の方策を講じなければなりませんが、営業担当と経理担当者との連絡協調が必要になると思います。
Ⅰ 法律上の貸倒れ・・・法基通 9-6-1
(1)①会社更生法・民事再生法、債権者会議によって切り捨てられる債権
②債権者の債務状況が相当期間継続( 3~5年)していて弁済を受けることが困難であり、内容証明郵便などで債権放棄を通知した債権。
(2)切り捨てられた債権額についての通知書類の到達した事業年度、通知した事業年度で損金経理処理する。その他の事業年度での処理は不可となる。
(3)決定処理の通知書類、返戻された郵送書類等の整理・保管を行う。
Ⅱ 事実上の貸倒れ・・・法基通 9-6-2
(1)債務者の支払能力・資産状況(破産・死亡・行方不明・債務超過等)からみて回収不能が明らかとみとめられる場合。
(2)回収不能が明らかであると判断した事業年度で損金経理処理する。担保物がある場合は、処分後でなければならない。一部の処理は認められない。
(3)債務者との交渉・確認状況(現地や電話での催告、現場の状況等)を詳細に書面・写真等で記録し保存する。
Ⅲ 形式上の貸倒れ・・・法基通 9-6-3
(1)営業活動による継続取引の売掛債権について、最後の取引停止後から 1年以上経過しても弁済のないもので、その回収に係る費用が債権額を超える場合。
(2)1年以上経過した、あるいは督促しても弁済のない事業年度で処理する。
(3)売掛債権の額から 1円の備忘価額を控除した額を損金計上処理する。担保物がある場合はできない。
Ⅳ 留意すべき事項
①貸倒処理に至った書類(決定通知書・債権放棄通知書・債権督促や返戻の郵便物、催告した電話連絡や現地確認した事績等)の整備・保管。回収努力をしたが、不能であったことを証明するものを用意する。
②営業担当者等と連絡を密にし、貸倒事実の発生した・判明した事業年度で損金計により貸倒処理を行う。徒過した場合、処理不能になる場合も出る。
③内容証明による安易な債権放棄は、寄付金の処理になる場合もある。
④取引発生時の契約書・請求書も整理しておく(消費税の貸倒控除に必要)
Ⅴ 貸倒処理に係る消費税の貸倒控除・・・消 39①、消基通 14-2-4
課税売上計上時期の消費税率を適用し、別表一 ⑥の欄で税額控除できる。
免税事業者時や貸付金など消費税の発生しない取引について注意を要する。
法人税・所得税と連動するので、損金計上時期は慎重な判断が求められる。
会社更生法による更生計画の開始決定や、手形交換所の取引停止処分については、債権額の 50%を貸倒引当金として費用計上が認められますが、消費税は控除はできません。
(出 典)
国税庁タックスアンサー No.5320 貸倒損失として処理できる場合
法人税基本通達 逐条解説/税務研究会出版局
千葉旭事務所
木村 勇雄