経営に欠かせない「管理会計」とは
管理会計とは
「管理会計」は、会計情報を企業内部、特に経営管理者の意思決定や組織内部の業績測定・業績評価に役立てることを目的としている企業会計の一種です。経営管理者が見たい指標を反映させるため、企業ごとに内容が異なることが通常であり、作成にも特定のルールはありません。
それに対して「財務会計」は、株主、債権者、取引先、仕入先などの社外ステークホルダー(利害関係者)に営業活動の成果を財務諸表(貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書)として報告することを目的としています。それ故に、外部報告会計と呼ばれる所以でもあります。
「管理会計」と「財務会計」は、企業会計の一種でありますが、報告の目的や内容、手段が違ってきます。「財務会計」が、企業の経済活動を貨幣額によって捉え、会計制度に基づき、利害関係者に情報として提供するのに対し、「管理会計」は、企業の将来に有益な情報を、社内の経営管理者に提供し、最終的には業績改善を目指すためのものです。
一般的に最も重要だと思われる指標には、売上高や営業利益、ROEや営業利益率などがあります。これらは数字として見える指標ですが、非財務指標も意識しなくては管理会計として成り立ちません。先に述べたように、管理会計は社内向けの情報開示ですので、ルールがありません。ルールがない分、対象範囲が広く、何が一番業績改善に効果的な指標なのかを選択し、その企業に合ったプロセスを考えなくてはいけません。
KPI(重要業績評価指標)とは
KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)は、大きな影響を与える評価すべき数値のことです。業績改善、目標達成のための重要な指標です。KPIは業種や部署によっても異なります。例えば、営業部の売上目標達成に重要な指標は何だと思いますか?
売上達成のための重要な指標は、新規顧客獲得数や新商品の売れ行き、成約件数など業種ごとに要となる指標があります。これらは、決算書や業績報告書などで数字として表れますが、他にも非財務情報として重要な指標があります。来客数や1日あたりの接客数、また、離職率などです。これらの情報は損益計算書を見てもでてきません。営業の現場などで管理している数値であり、むしろ、現場のスタッフの方が分かっているかもしれません。
来客数や1日あたりの接客数は、なんとなく売上に影響を及ぼす情報だと理解できますが、離職率も影響を及ぼす非財務指標と言えます。離職率が低いという事は、経験の浅い社員が少なく、お客様を満足させ安定したサービスを提供できていることに繋がります。また、教育のための先輩社員の人事コストや外部に委託している社員研修費用も抑えることができます。
この様に、非財務指標は財務諸表の数値を細分化しても見えてきません。それより、現場の声に耳を傾け、コミュニケーションをとる方が手っ取り早く正確な情報を掴むことができます。経営管理者が必要とする情報には、正確さとスピードが大切です。管理すべき数字は、経理部や管理会計部などの専門職の方々が、管理会計に必要な自社のKPIを精査し、管理運営していくことが大切です。
よくある話ですが、同じ売上高を営業部で管理したり、経理部で管理していては、いざという時に、どの数字が正しいのか分からなくなります。これでは、相違の原因を追究するのに、投下する人件費や事務費など無駄なコストがかかってしまい、経営管理者が必要とした時に資料を提出できない事態に陥るだけです。共通化できる情報は社内で統一し、支店や部署という垣根を越えて社員の目標数値を共有できる仕組み作りを心掛けみてください。
管理会計はあくまでも企業会計の一種ですので、財務会計と管理会計を併用して、業務改善に役立つ情報を経理部や管理会計部が発信できるように上手く使ってみることをお勧めします。
参考書籍:中央経済社「管理会計の仕組みと実務がわかる本」
渋谷事務所 佐藤郁子