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法人税の決算申告後に原価や経費の計上漏れがあった場合

法人税法において、法人税の申告は、定時株主総会により承認可決された貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表、いわゆる確定した決算に基づいて行う旨を定めています。決算は、期末における勘定科目の残高を確定する作業であるため、費用収益の対応関係等充分確認することが必要です。しかし、何らかの事情により、決算申告後に原価や経費の計上漏れ(失念)が発覚した場合、どう対応すればよいのでしょうか。
この場合、損金の額のみ発生しますから、直前の申告で、法人税を納付していれば税額が減少するため、更正の請求手続きを行います。
では、直前の申告内容について、所得金額がマイナス(赤字申告)であった場合はどうなるでしょうか。青色申告の場合、繰越欠損金にも影響を及ぼします。しかし、税額が減少するわけではありません。
国税庁HP「法人税及び地方法人税の確定申告に係る税額等についての更正の請求」によれば、既に行った申告について、次のような誤りがあったときに、更正を求める場合の手続ができます。

<更正の請求が出来る場合>
1 納付すべき税額が多すぎたこと
2 申告書に記載した翌期へ繰り越す欠損金又は翌期へ繰り越す連結欠損金が少なすぎたこと
3 申告書に記載した還付税額が少なすぎたこと

間違っても、進行期において前期損益修正損などの科目を使用し、次の期で損金処理することは認められません。訴訟の東京地裁平成27年9月25日判決の抜粋によれば、
「企業会計上の前期損益修正の処理を法人税法上も是認し、後の事業年度で(も)損金の額に算入することを認めると、計上時期を納税者の恣意的な選択に委ねることも可能になってしまい、法人税法がそのような事態を容認しているとは解されない。法人税法上、修正申告や更正の制度があり、後に修正すべきことが発覚した場合、過去の事業年度に遡って修正することが予定されているのであって、企業会計固有の問題に基づき行われているに過ぎない前期損益修正の処理を、それが企業会計上広く行われているという理由だけで採用することはできないというべきである。」
適正な期間損益計算を実現するため、取引の真実性、適時性、網羅性を確かめ、相当の注意義務を履行することで、取引の計上漏れを防止することがなにより重要です。

参照:国税庁HP
「法人税及び地方法人税の確定申告に係る税額等についての更正の請求」
http://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/1554_8.htm
「平成27年判決分(税務訴訟資料第265号「順号12584~12778」)」
https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/soshoshiryo/kazei/2015/pdf/12725.pdf

川崎業務部  小髙 法之

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