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振り込め詐欺と雑損控除

 振り込め詐欺やオレオレ詐欺と呼ばれる特殊詐欺の被害件数は、年々増加傾向にあります。警察庁の統計によりますと、2017年中の被害件数は、1万8,201件で7年連続の増加となりました。一方で被害額は約390億3千万円で3年連続減少となりました。このことから、件数は増加傾向にあるものの1回当たりの被害額は減少しているようです。
 さて、この振り込め詐欺等の被害に遭い、だまし取られた金額相当額の損失は雑損控除の対象になるのでしょうか。
 結論から申し上げますと、詐欺による損失等は、雑損控除の対象になりません。
 雑損控除は、次のように規定されております。
 災害又は盗難若しくは横領によって、資産について損害を受けた場合等に、一定の金額の所得控除を受けることができ損害の要因は、次のいずれかの場合に限られます。

  1. 震災、風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象の異変による災害
  2. 火災、火薬類の爆発など人為による異常な災害
  3. 害虫などの生物による異常な災害
  4. 盗難
  5. 横領

なお、恐喝や詐欺による損失は対象とはなりません。
 
 詐欺による損失等については、国税不服審判所により平成23年5月23日に裁決が出ており、ここでは、「請求人の意思」と「金銭の占有者」がポイントになっております。
 災害や盗難は、自分自身が予期せぬ場合に受ける被害であるのに対し、恐喝や詐欺は、あくまで自分自身の意思があった上で受けた被害という考え方です。
 また、振り込め詐欺等の犯人はそもそも被害者の金銭の占有者ではないので、横領による損失には当たらないという考え方です。
 
 自分自身の意思で振り込んだとはいえ、振り込め詐欺等の被害者の大半は、年配者であり、また冒頭に記載しましたとおり、年々件数が増加している背景として詐欺行為が巧妙化しているのは明らかです。
 自分自身は被害に遭わないと思っていても、被害に遭ってしまうのが振り込め詐欺です。自己責任という意味では、被害に遭わないためにも家族で合い言葉を決めるなど注意することも必要ですが、今後振り込め詐欺等が何らかの救済措置が受けられるよう期待したいものです。
 
出典:警視庁HP
国税庁HP
国税不服審判所HP
 

川崎事務所 長谷川誠

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