平均課税制度を検討してみてはいかが?
多額の更新料や権利金を受け取るなどで臨時的に収入が増えた場合や、印税収入が大きく増えた等で所得の変動が激しかった年に、平均課税という方法を用いて所得税の計算をすることによって税負担を緩和することが出来るのをご存知でしょうか。
平均課税制度とは
変動所得や臨時所得において、それらの所得が特定の年に集中して発生することによる高い累進課税率の適用を緩和させるため、計算上課税所得を数年間にわたり平均化して課税することで、所得税の負担を軽減する制度で、通常所得税の計算に用いられる超過累進税率よりも税率が低く設定されています。
「変動所得」とは、各種所得の区分にかかわらず漁獲や養殖による所得、印税や原稿料、作曲料などによる所得をいいます。
「臨時所得」とは、各種所得の区分にかかわらず次の所得やこれらに類する所得をいいます。
・土地や家屋などの不動産、借地権などを3年以上他人に使用させることにより、一時に受ける使用料の2年分以上である権利金や頭金などで、譲渡所得に該当するものを除くもの
・公共事業等に伴う事業の廃業等や公害による損害の補償で、3年以上の期間分の保証金
・プロスポーツ選手などが、3年以上の専属契約を結ぶことにより一時に受ける報酬の2年分以上である契約金
平均課税を選択できるのは次の条件を満たす場合です。
① 変動所得と臨時所得の合計額がその年の総所得金額の20%以上であること。
② 過去2年間に変動所得と臨時所得があった場合は、その年の変動所得が前年・前々年の平均金額以上であること。
平均課税制度を適用すれば、通常の超過累進税率よりも低い税率を適用して税額を計算することができます。
計算方法は、
まず、総所得から平均課税の対象となる変動所得と臨時所得の合計の5分の4を引いた金額(調整所得金額)の所得税を計算しその税率(平均税率)を算出します。
(課税総所得金額)-(平均課税対象金額)×4/5=調整所得金額
次に、総所得から調整所得金額を引いた金額に算出した平均税率をかけた金額と調整所得金額の税額を合算することで税額を計算します。
{(総所得-調整所得金額)×平均税率}+調整所得金額の税額=税額
その結果、低い税率で税額を計算できるため、所得税負担が少なくなります。
平均課税制度を利用するにあたっては、確定申告書にその旨を記載するとともに、「変動所得、臨時所得の平均課税の計算書」を添付する必要があります。
もしも、「去年、平均課税が使えたのに知らなかった」と思われたなら、「更正の請求」という手続きをして税金を取り戻すことができます。平均課税の更正の請求は5年前まで遡れますので、前年だけでなくそれ以前も修正することができます。
参照:国税庁 変動所得・臨時所得の平均課税
所得税法第90条《変動所得及び臨時所得の平均課税》関係
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/17/01.htm
横浜青葉事務所 高橋 紫