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人材不足時代の業務の考え方(社会福祉施設編)

~人件費率の差や人手不足の生じる理由~

 不思議なお話があります。

 私共では、保育所の他にも介護施設をはじめとした他の種別の社会福祉施設の会計を見させていただいております。
 その中で、いま話題になることの一つは、やはり「人材不足」やその結果として生じる「人件費率の増加」です。
 「人件費率の増加」は、派遣職員の多用や、安定雇用ができないためにロスが多くなることに基因するようです。

 不思議なお話に戻りますと、例えば人件費率(この場合、事業活動計算書における人件費の額がサービス活動収益計
の額に占める割合とお考えください。)が65%である施設と75%である施設、どちらにおうかがいしても、
「人材不足できつい・・・」と仰られます。

 不思議です。

 上記65%と75%の差を、金額に置き換えると以下のようになります。
 仮に同規模の施設でサービス活動収益計が2億円だった場合、

  

 職員1人あたり人件費(法定福利費含む。年間。)を400万円とすると、2,000÷400=5名分です。
(給与水準は同等と仮定します)
 65%の施設の人からみたら、あと5名いれば随分と楽になるのに・・・と思われても不思議ではありません。

 ということは、逆に言えば、75%の施設はなぜ、人数が多いのに「人材不足だ、きつい・・・」ということになるのでしょうか・・・。

 すこし探ってみましょう。

 
 実際の現場の声を聞くと、職員さんによってその働きは異なるようです。
 能力(知識・経験などが多く、うまく業務をまわすことができる)のある人、逆に経験等が浅い人、経験年数はあるが、
能力が上がらない人、怠慢な人・・・。

 これがどのように影響するか見てみましょう。

人工の差はどうして生まれるのか・・・

従業員A 能力のある職員(の仕事量)
従業員B 経験が浅い、能力が低い、怠慢な人(の仕事量)

2名で最適と考えられる業務Xと業務Yがあります。

≪パターン①≫
Aが2名でちょうどこなせる量だとすると、下のようになります。

≪パターン②≫
ところが、AとBが配置されていると、AはBの分をカバーしょうとするため、1.5人分の仕事量をこなさなければなりません。
Bは、これが精一杯(と思っている)なので、負担感はありませんが、Aは1.5人分なので負担感がでてきます。

つまりパターン①と②では、職員数は同じでも負担感は②の方が強くなります。これが「きつい・・・」という声になります。

≪パターン③≫
現場からこの声があがって、それを受け入れて新たに職員Cを採用することになりました。
すると下のようになります。

結果として、2人で済む(はず)の業務に3人を投入していることになります。

ごく単純にいえば、パターン③はパターン①の1.5倍の人件費がかかることになります。
そして、パターン③の状態であれば、Cの余力部分(点の部分)で別の作業をしてもらえればよいのですが、怖いのは以下のようになってしまうことです。

≪パターン④≫
Cが本来はAくらいの仕事ができるのに、手を打たないと3人でちょうど業務がまわるような働き方になってしまう可能性がでてきます。

すると、負担感はどうでしょうか。
BとB’(C)は負担感はないかもしれませんが、Aはパターン②のときと変わらず、負担感を抱えたままです。

結果としてパターン②とパターン④を比較してみると、同じ業務量に対して②は2人、④は3人の配置でかつ、両パターンともに負担感があるという状態です。

上記は、あくまでもわかりやすいパターンにしたもので、実際の現場はこんなに単純な話ではない、という部分もあるでしょうが、それぞれの局面で少なからず、上記のような状態があることは否定できないところでもあります。(これは福祉現場に限ったことではなく、あらゆる業種の現場に共通することだと言えます)

理想は、パターン①にすることです。
すなわち、現状で「きつい・・・」いう施設はパターン④の状態である可能性がありますので、これを①にもっていけるように
業務のやり方を考えていかなければならないことになります。

いかがでしょうか。皆様の施設では、このような状況とはなっていませんか?
最近は当事務所でもこのような人材に関するご相談も増えてきてるので、ご紹介させていただきました。

青葉事務所
砂田 力

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