クリニック開業のヒント1
渋谷に形成外科を開業して8年になる医師が、開業についてのヒントを教えて下さいました。
開業を考えている医師の方のご参考になると思います。
お話しをして下さった先生のプロフィール
南平台緒方クリニック院長慶應義塾大学医学部卒後、25年以上にわたり臨床経験と最新医療の研鑽を重ね、慶應義塾大学医学部形成外科准教授を経て、平成24年5月南平台 緒方クリニックを開設。専門は「形成外科」、「美容外科」、「レーザー医学」、「顎顔面外科」、「皮膚腫瘍外科」などの専門医資格を持ち、安全かつ最適な医療を提供している。
<開業を志した時期と理由>
私の場合開業の動機はと考えてみると、 経営というものをやってみたいと思っていたことがひとつに挙げられます。ビーター ·ドラッカーは読んでいませんが、 レイ ・ クロックの自伝、『成功はゴミ箱のなかに:マクドナルド創業者レイ ・ クロック自伝』(プレジデント社刊)、は夢中になって読み、頭の隅にずっと残っていました。
また、富ヶ谷のフレッシュネスバーガーに置いてあった同社創業者である栗原幹雄氏の本『面白いことをとことんやれば、起業は必すうまくいく』(アスベクト社刊)は起業を等身大で考えさせてくれました。
風変わりなフレッシュネスだなと思いつつ、ときどき寄り道していた富ヶ谷店が創業店舗だったこと「人件費オレ」「客単価X人数では黒字にならない」「自分らしさを楽しもう」 と いったフレーズが自分でもやってみたいと思わせるに十分でした。そうか、計算ではダメなのかと。
「居場所がある人は幸せです」 「自分の知識や経験、もてる技術を人の役に立てようと思わない人はいないはずです」 どこかで読んだそんな言葉も心のどこかに引っかかっていました。 自分の居場所はどこか、人のお役にたてる自分の知識や技術は何かと。
時期は 40 歳代後半を迎え 50 歳以降をどう生きようか思案し始めたころです。 研究も教育も診療も不得手な自分を自覚するも、 医者としてなんとかやっていけたらと考えていたころで、経営への興味もあり、定年後の生き方を考えたときにも定年のない開業医は魅力的でした。
<事前準備:市場調査と標榜科>
コンサルタントなしで物件を最初に決めてしまったので市場調査(診療圏分析)は行いませんでした。 銀行に融資を打診しに行って初めて市場調査の結果を求められました。 結局調査しないまま開業しましたが、場所と物件の選択は非常に重要だと思います。 自分で探した物件にしろ、コンサルタントの紹介物件にしろ、希望する診療スタイルを実現できるのか市場調査結果はこれを支持するのか 良い物件と信じるか 妥協するか、見送るか。AIアドバイスが欲しいところです。契約押印と同時に数百万円の補償金と家賃が発生しますので、事実上後戻りが難しくなります。
筆頭標榜科は開業当初は形成外科でしたが、現在は外科としています。併記する標榜科は皮膚科、美容外科、アレルギー科です。
次回は<開業後に困ったこと よかったこと>についてお伝えします。
出典:「形成外科 63巻2号 2020年2月」克誠堂出版
【緒方先生のクリニック 『南平台緒方クリニック』】