通勤手当の支給要件
支給基準が定められている通勤手当は労働基準法上では「賃金」に当たりますが、通勤手当の支払い方法や支給額については労働基準法に特段の制限や義務の規定はありません。従って通勤手当を支払うのか支払わないのかは会社側の自由裁量となります。
そのため通勤手当を全く支給しないケースもあるかと思いますが、一般的には支給要件を定めて支払っている会社が多いようです。
通勤手当の支払い要件では、「公共交通機関を利用する者に、自宅から会社までの運賃・時間・距離を勘案し、最も合理的で経済的な経路による定期乗車券購入実費を支給する。」といった支給基準が規定されます。
では経済的な経路はともかく、合理性に関してはどのように判断すればよいのでしょうか。
まずは入社時や住所変更時に、最寄り駅や通勤経路、通勤定期代等を記した「通勤手当支給申請書」を提出してもらい、確認をします。複数の経路がある場合には所要時間を勘案し、大した差がないようでしたら通勤定期代の安価な方を会社側が指定することも可能です。ただ乗り換え回数や利便性等も考慮した方が従業員の不満は少ないかもしれません。
バスの利用に関しては実際には乗っていなかったり、またはバスを使うほどの距離ではなかったりといったケースも考えられます。「バス利用者で、自宅から自宅最寄駅までの直線距離が2km以上の場合にバスの定期代を支給する」といった支給基準も必要となってくるでしょう。
また新型コロナウイルスの影響で在宅勤務を導入している企業も多いかと思われます。在宅勤務手当を支給している場合、通勤手当の支給要件は見直されるのでしょうか。
週1~2日程度を在宅勤務とし、その他は出勤しているという場合には今まで通り定期代を支給し、週3日以上が在宅勤務である場合には実費を精算するとしているところもあるでしょう。実際週4日以上通勤に利用しないと運行会社によりバラツキはありますが、実費精算のほうが安価になる傾向です。
在宅勤務といった今まであまり想定されていなかった働き方が今後は選択肢の一つになってくるでしょう。それを踏まえた就業規則の見直しや、各種規定の整備が肝要と思われます。
東京練馬事務所
総務部 谷野 文則
参考文献
「通勤手当の不正受給を防ぐには」 TKC 戦略経営者 2008年3月号