活用しよう!高年齢雇用継続給付金
日本の企業の多くは定年を60才としており、定年後は65才まで嘱託社員等として再雇用するケースが一般的です。しかし、再雇用後は職務の変更とともに給与も引き下げられることが多いので、労働者の就業意欲を維持・喚起し、65才までの就業を促進するため、国(ハローワーク)が従業員に給付金を支給する制度があります。
■対象となる人
次の全てを満たす方です。
① 60才以上65才未満の方
② 雇用保険に加入していた期間が5年以上あること
③ 60才時点の賃金(※)と比較して、60才以降の賃金が75%未満となっていること
※60才前6ヶ月間の平均給与
会社勤めで定年を迎え、嘱託社員として再雇用される場合、多くの人が当てはまるのではないでしょうか。
■支給額
従業員が受け取る各月の賃金額の0.44%~15%が本人に直接支給されます。
60才時の賃金と比べて下落幅が大きいほど支給率は高くなります。(支給率表参照)
60才時の賃金が40万円の人の場合で見てみましょう。
ケース① 60才以降の賃金が32万円の場合
→ 75%未満になっていないため、対象外。
ケース② 60才以降の賃金が28万円の場合
→ 70%まで下がっているので対象。
給付金は28万円の4.67% (13,000円)
ケース③ 60才以降の賃金が24万円の場合
→ 60%まで下がっているので対象。
給付金は24万円の15% (36,000円)
ケース②と③で従業員が受け取るお金を比べてみると、
② :賃金28万円+給付金13,000円=293,000円
③ :賃金24万円+給付金36,000円=276,000円
賃金だけで見ると差は4万円ですが、給付金を加えると差は17,000円に縮まります。
さらに、給付金は非課税ですから、社会保険料や所得税も考慮すると、手取金額の差はさらに縮まります。
気をつけなくてはならないのは、あくまで「従業員が受け取る賃金」に対して支給率を乗じている点です。また、賃金低下率が61%以下になると、支給率は15%で固定されますから、これ以降は賃金が下がれば下がるほど、給付金の「もと」となる賃金が小さくなるため、給付金も少額になってしまいます。
■会社も従業員も助かる制度!
このように、会社にとってみれば人件費を抑えることができますし(給与が少なければ、社会保険料の会社負担分も減ります)、また、従業員にとってみればあまり残業をする必要がなくなります。なぜなら、残業をして給与を増やしたとしても、その分支給率(%)が低くなってしまい、結果的に手元にもらえるお金はそんなに変わらないからです。
■申請しないともらえない
このように利用価値の高い制度ですが、申請手続きをしなければ給付金を受け取ることができません。また、そもそもこの制度を知らない方も多いのではないでしょうか。
お得な制度ですから、是非活用してください。
■年金との調整
65才までの間に年金(老齢厚生年金)を受け取ることができる人の場合、高年齢雇用継続給付金と併給すると、年金支給額が一部調整されることがあります。詳細につきましてはご相談ください。
【支給率表】
出典:厚生労働省
コンパッソ社会保険労務士法人
社会保険労務士 横尾健司