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ハラスメントが社内で発生したら

1.事業主の義務

 職場におけるハラスメントは、働く人の個人としての尊厳を不当に傷つける社会的に許されない行為であるとともに、働く人が能力を十分に発揮することの妨げにもなります。

また、ハラスメントは個人的な被害の問題だけではなく、
会社にとって大きな損害となります。職場環境の悪化により、職員の士気、生産性が下がり、さらには退職者も増加という悪循環に陥ります。

“雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律”(以下、「男女雇用機会均等法」といいます)、及び、”育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律”(以下、「育児介護休業法」といいます)において、セクシャルハラスメント(以下、「セクハラ」といいます)、妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント(マタニティーハラスメントと呼ばれたりします)に関し、事業主に防止する措置を講ずることを義務付けています。
パワーハラスメントについては、直接的な法律での定めはありませんが、会社は労働契約法第5条の安全配慮義務の定めにより、労働者の生命、身体等(心身を含む)の安全を確保し、必要な配慮をすることが義務付けられています。
これらの防止義務を怠り、さらにはハラスメントを放ったらかしにしておくと、使用者責任(民法715条)、債務不履行(民法415条)、を問われ賠償責任を負うこととなります。

このようなことにならないよう、まずは就業規則等の規定や文書で周知、啓発し、また、相談窓口の設置し防止措置をとっていることが大前提です。それでもハラスメントが起きてしまった場合は初動が大切です。

2.相談があったら

(1) すぐにとりかかる

 時間が経過すると関係者の記憶が曖昧になり、被害者の感情も害し、会社への信頼も低下します。すぐに対応しましょう。

(2)丁寧に事実関係を聞く

 相談を受けたら、先入観を持たずに、公平な立場で事実関係を調査します。まず相談者の話をよく聞くことが大切です。相談にのる姿勢で臨みましょう。話を一通り聞いたら足りない必要な情報を質問します。調査すべてに言えることですが、必ずヒアリングの際はメモを取るようにします。主張の整理や後々訴訟になった場合の材料となります。

(3)証拠の保管

 相談者からの了解を得て、呈示されたメール、写真、動画、録音データ等を証拠として保管しておきましょう。

(4)関係者の聞き取りについて相談者への事前説明

 とくにセクハラの相談では、相談の内容が他の社員に広まり二次被害を発生させる恐れがあります。そのため社内で相談内容を保有する範囲を明確にします。それでも他の社員に事情を聞かなければならない場合は、相談者に説明し理解を得ておくことが大切です。ただし、事情を聞く際は他言してはならない旨を伝え情報漏洩の防止を徹底する必要があります。

(5)加害者への調査は真実を話してもらえる環境を作る

 加害者への調査でも相談者のときと同じように話をよく聞くようにします。最初から問い詰めるような調査を行うと、嘘をついたり、適当に取り繕ったりすることがあります。そして、話を聞いたうえで、事実ではないことを証言したり、隠したりすることが後々自身に跳ね返ってくることをよく諭しておきます。1回目の調査で事実が判明すれば良いですが、加害者にハラスメントに該当する行為をした認識がない場合や、突然のことで思わず嘘を言ってしまった場合等は、1週間程度の日にちをあけて再度話をする機会を設けましょう。1週間考えることで正直に話をしてもらう環境を会社から作ることが大切です。

3.やってはいけないこと

 ①調査をしない

 ②もみ消す

 ③当事者に任せる

上記3つは論外です。先に述べたように会社にはハラスメントを防止する措置を講ずる義務があります。また、防止策を講じても起きてしまったハラスメントには今後の職場環境改善にためにも真摯に向き合う必要があります。

4.会社の判断

 事実関係の調査が終わったらハラスメントがあったのかなかったのか判断をすることとなります。実際に判断しかねる事案も多くあります。後に訴訟に発展するケースもあるでしょう。しかし、会社がハラスメントの防止措置と発生後の対応に落ち度が無ければ、会社の責任は問われる可能性は低いでしょう。当事者の処遇については、事案により異なりますが、配置転換や就業規則の定めに従い懲戒処分を行うことになります。

コンパッソ社会保険労務士法人
増田 幸太

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