企業の総務部が知っておきたい知的財産権~新聞クリッピング~
ビジネスシーンで気を付けなければいけない知的財産権について、弁理士の井上先生に解説頂きました。
5回にわたり、企業の総務部が気を付けるべき知的財産についてお書き頂いています。
・社内報の作成についての知的財産権法上の注意点
・新聞記事、新聞のクリッピングについての知的財産権法上の注意点(今回)
・ノベルティ作成についての知的財産権法上の注意点
・イベント運営についての知的財産権法上の注意点
・デザインについての知的財産権法上の注意点
総務部のお仕事は、経営陣の方々、社内のすべての部署の方々と関係し、非常に重要で、広範囲にわたっています。それゆえ、無意識のうちに知的財産権に絡んだお仕事をしていることがあり、知的財産権との関係において注意すべき点を知っておく必要があります。
新聞記事、新聞のクリッピングについての知的財産権法上の注意点
新聞記事は原則として著作物に該当します。
従いまして新聞記事をコピーして社内の会議などで配布する場合、新聞記事をデータ化して電子メール、イントラネットなどにより社内に配信する場合には新聞社の許諾を得る必要があります。もちろん、ホームページなどに新聞記事を無断で掲載することは著作権法第23条の公衆送信権侵害となる可能性が高いですし、新聞記事を要約した場合でも著作権法第27条の翻案権侵害となる可能性があります。
しかしながら、少部数のコピーなどを、その都度新聞社に連絡し許諾を得ることは手間がかかり現実的ではありません。そこで、新聞著作権協議会の加盟社の新聞については日本複製権センターと包括的な年間契約を結ぶことにより新聞記事の使用ごとに新聞社に連絡することなく少数のコピー、PDF化などができるようになります。
但し、クリッピング・サービスのように新聞記事を継続的にコピーする場合には、上記の年間契約の範囲を超えることとなり個々の新聞社と契約する必要があります。クリッピング・サービスを提供している会社と契約する場合は、その提供会社が新聞社とどのような契約を結んでいるかを確認する必要があります。
東京UIT国際特許業務法人
弁理士 井上 正
・新聞記事を無断でコピー、データ化、要約して配布することは違法
・新聞著作権協議会加盟社の新聞で、日本複製権センターと包括的な年間契約を結んでいる場合には小数部のコピーに限り許諾なしに複製できる
・上記の包括的契約を結んでいても、継続的にコピー利用する場合は個々の新聞社との契約が必要
・PR会社などのクリッピングサービスを利用する場合は、その会社が新聞社とどのような契約を締結しているか確認が必要
参考ホームページ
公益財団法人著作権情報センター
https://www.cric.or.jp/index.html
新聞著作権協議会
http://www.ccnp.jp/
一般社団法人日本音楽著作権協会
https://www.jasrac.or.jp/index.html
東京UIT国際特許業務法人(http://www.uit-patent.or.jp/)
3名の異なる専門分野の弁理士によって設立された特許業務法人。
とりわけAIやITといった分野に強く、30年のキャリアの中で多数の案件に携わっている。
その他、意匠や商標にも対応しており、ビジネスにおける様々な知的財産権の問題や事前対策を相談できる事務所である。