社会保険労務士<事務所通信’20/10月>
対象事業場の約半数で違法残業を確認
~令和元年度監督指導結果より
◆15,593事業場で違法な時間外労働確認
9月8日、厚生労働省は令和元年度の長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果を公表しました。
働き方改革関連法による時間外労働の上限規制が令和元年4月1日より中小企業にも適用されたこと等もあってか、対象事業場数は平成30年度の29,097から約1割増の32,981で、そのうち15,593(47.3%。平成30年度は11,766(40.4%)で違法な時間外労働が確認され、指導が行われています。
◆健康障害防止措置に関する指導状況
監督指導の実施事業場のうち15,338(46.5%)で、健康障害防止措置が不十分として、長時間労働者に対する医師面接等を講じるよう指導が行われています。平成30年度の20,526(70.5%)に比べて減少していますが、まだまだ多いことがわかります。
◆対象事業場の7割近くが30人未満、企業規模別では3割近くが300人以上
事業場規模別に見ると、監督指導実施事業場の41.7%を10~29人の事業場が、25.3%を1~9人の事業場が占めており、30人未満の事業場で約7割を占めています。平成30年度と比べてこの割合は増えており、これらの事業場で特に注意が必要といえます。
企業規模別に見ると、29.3%が300人以上、24.7%が10~29人、12.8%が100~299人となっています。こちらも平成30年度に比べて30人未満の割合が増えています。
◆「商業」の事業場で是正勧告が急増
監督指導の対象事業場32,981のうち、商業の事業場は8,009(24.3%)で、そのうち6,088(76.0%)で労働基準関係法令違反がありました。平成30年度の4,647事業場への実施と3,097事業場での違反に比べると、ほぼ2倍となっています。
◆11月には「過重労働解消キャンペーン」も実施
厚生労働省では、11月に「過重労働解消キャンペーン」を実施し、重点的な監督指導を行うとしています。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、3月17日に発出された依命通達では、中小企業等に対する相談・支援について、「労働基準関係法令に係る違反が認められた場合においても、新型コロナウイルス感染症の発生および感染拡大による影響を十分勘案し、労働基準関係法令の趣旨を踏まえた自主的な取組みが行われるよう、きめ細かな対応を図る」ともされていますが、自社の時間外労働の実施状況や健康障害防止措置に関する対応に問題がないか、改めて確認しておき、不安がある場合は速やかに専門家に相談しましょう。
シニア世代の就業・生活スタイルの動向
~NRI社会情報システム調査
(独)労働政策研究・研修機構が8月26日、5月から8月にかけて行った「新型コロナウイルス感染拡大の仕事や生活への影響に関する調査」の一次集計結果を公表しました。公表された調査結果のポイントをみてみましょう
◆「民間企業の雇用者」では、就労時間や月収に揺り戻し傾向も夏季賞与は約3割が減少
4~5月にかけて「勤務日数や労働時間の減少(休業を含む)」があった人の割合が急増したものの、7月末現在ではやや低下し、他方、引き続き増加した「収入の減少」がこれを上回った。また、7月末現在も4月1日時点と同じ会社で働いている場合の労働時間や税込み月収額の変化をみると、いずれも5月の第2週にかけて低下した後、揺り戻されてきたものの、7月の最終週現在でも通常月の状態には未だ戻り切っていない。
7月末現在の「民間企業の雇用者」(4,194人)の直近の月収額では、新型コロナ問題の発生前のもともと(通常月)の月収と「ほぼ同じ(変動1割未満)」の回答が約7割(70.2%)の一方、「減少した」割合計も4分の1を超えた(26.7%)。また、昨年は夏季賞与(特別手当)を「もらった」場合(2,495人)に、本年の支給額がどうなったか(どうなる見込みか)尋ねると、昨年の支給額と「ほぼ同じ(変動は1割未満)」との回答が半数を超えた(51.9%)一方、「本年は支給無し」(2.0%)を含めて約3割(30.4%)が「減少した」と回答した。
◆休業手当は「半分以上が支払われた」人が半数超、「まったく支払われていない」が2割超
影響として「勤務日数や労働時間の減少(休業を含む)」を挙げた「民間企業の雇用者」938人のうち、自身は働きたい・働ける状態なのに、勤め先から自宅待機を命じられたことが「ある」割合は6割超(64.3%)。また、「休業」を命じられたことが「ある」場合(603人)の勤め先からの休業手当については「休業日(休業時間数)の半分以上が、支払われた」との回答が半数を超えた(54.1%)ものの、「休業日(同)の一部が、支払われた」(21.9%)、「(これまでのところ)まったく支払われていない」(24.0%)もそれぞれ2割超みられた。
◆「在宅勤務・テレワーク」の実施日数は、いったん拡大後急速に減少
「在宅勤務・テレワーク」の1週間あたりの実施日数の変化をみると、新型コロナウイルス感染症の問題が発生する前の通常月では、7割超が在宅勤務・テレワークを「行っていない」と回答していたが、その割合は5月の第2週にかけて顕著に低下し、「在宅勤務・テレワーク」が急速に拡がった。しかし、5月の最終週以降は「行っていない」割合が揺り戻し、7月の最終週現在で「行っている(1日以上計)」割合は半数を下回っている。
◆フリーランスを含めた調査結果では、「家での食費」を「切り詰めている」割合も増加
全有効回答者(民間企業の雇用者+フリーランス計4,881人)を対象に、過去3か月間(5~7月)の世帯全体の家計収支を尋ねると、「収支トントン」が1/3を超えた(34.6%)ものの、支出が収入を上回る赤字計(28.7%)が黒字計(25.9%)を上回った。「正社員」は黒字計が優勢だが、「非正社員計」では赤字計が1/3を超え(33.6%)、さらに「フリーランス」では4割超(43.2%)と高く、黒字計から赤字計を差し引いた赤字超過が▲28.2ポイントに及んでいる。
また、全有効回答者を対象に、「感染の収束が見えないこと」についてどれくらい不安を感じているか尋ねると、かなり不安とやや不安を合わせた「不安」計が8割を超え(86.9%)、「不安はない」計(9.5%)を大きく上回った。特に「収入の減少に伴う生活への支障」に対する不安は、「正社員」(61.3%)より「非正社員計」(65.6%)、「フリーランス」(71.1%)ほど高く、昨年1年間の世帯年収が低いほど概ね高まる傾向がみられた。
これらの結果をみると、今後の課題として、正規・非正規を問わず「収入の減少」に対する対策、いったんは増加したものの減少に転じた「テレワークの定着」、多くの不安を抱える「非正規へのしわ寄せ」への一層の対策が求められるところです。
【労働政策研究・研修機構「新型コロナウイルス感染拡大の仕事や生活への影響に関する調査 」(一次集計)結果(PDF)】
https://www.jil.go.jp/press/documents/20200826.pdf
10月の税務と労務の手続提出期限
[提出先・納付先]
<12日>
○ 源泉徴収税額・住民税特別徴収税額の納付[郵便局または銀行]
○ 雇用保険被保険者資格取得届の提出<前月以降に採用した労働者がいる場合>
[公共職業安定所]
<11月2日>
○ 個人の道府県民税・市町村民税の納付<第3期分>[郵便局または銀行]
○ 労働者死傷病報告の提出<休業4日未満、7月~9月分>[労働基準監督署]
○ 健保・厚年保険料の納付[郵便局または銀行]
○ 健康保険印紙受払等報告書の提出[年金事務所]
○ 労働保険料の納付<延納第2期分>[郵便局または銀行]
○ 労働保険印紙保険料納付・納付計器使用状況報告書の提出[公共職業安定所]
○ 外国人雇用状況の届出(雇用保険の被保険者でない場合)<雇入れ・離職の翌月末日>
[公共職業安定所]
~コンパッソ社会保険労務士法人よりひと言~
10月より最低賃金が変更になります。確認を忘れずに行いましょう。
(今月の担当:増田 幸太)