社員とのトラブルを防ぐために。副業を解禁する前に準備しておくべきこととは
副業を希望する人が増えている
収入アップや自己実現のために、副業を希望する労働者は年々増えています。
平成30年7月13日に総務省統計局が発表した「平成29年就業構造基本調査」によると、平成29年時点で有業者に占める副業をしている人の割合は4.0%で、平成24年に比べて0.4%増加しています。また、追加で就職を希望する人の割合は6.4%で、正規の職員・従業員、非正規の職員・従業員ともに増加傾向です。
一方で、情報漏洩のリスクや、社員の長時間労働につながるなどの懸念から、副業解禁に慎重な企業は少なくありません。副業解禁によって、社員とのトラブルを防ぎ、会社を守っていくためには、事前にしっかり準備をすることが必要です。
今回は、副業を解禁するにあたって、経営者や人事担当者が事前に準備しておくべきこと、解禁後に必要となることを整理していきます。
副業を容認する範囲や手続きなどを決める
副業解禁にあたっては、自社の実情を踏まえたうえで、容認する範囲や手続きなどを決めておく必要があります。このとき、経営者や人事担当者が一方的に決めるのではなく、社員と十分にコミュニケーションをとることが大切です。
事前に決めておくべき事項としては、容認する副業の範囲(業務内容、就業日、就業時間、就業時間帯、対象者の範囲など)、副業を行うための手続き(会社への届出や上司からの許可が必要か否かなど)、副業の状況を会社が把握する仕組み(上司への定期的な報告が必要か否かなど)、副業の内容に変更が生じた場合の手続きなどが挙げられます。
副業者の長時間労働や働きすぎによる健康障害を防止するために、会社として適切な措置(時間外労働の抑制を行うなど)を講じる準備も整えておくと良いでしょう。
就業規則を見直す
副業を解禁する場合、多くの会社で就業規則の見直しが必要になります。
この際、厚生労働省が公開している「モデル就業規則」を参考にすると良いでしょう。「モデル就業規則」は平成29年3月28日に決定された「働き方改革実行計画」を踏まえて平成30年1月に改定されており、労働者が勤務時間外に、他の会社などの業務に従事することができるとしています。
就業規則を改定する際は、社員の副業を制限する場合についても定めておくことが推奨されます。「モデル就業規則」では、労務提供上の支障がある場合や企業秘密が漏洩する場合などに、会社は副業を禁止または制限できるとしています。
副業の内容を確認する
ここからは、副業を解禁した後に必要となることを整理していきます。
社員から副業の申請があった場合、人事担当者や上司は副業の内容を確認するようにすると良いでしょう。確認内容は、どの程度の業務量で就業時間は何時間ぐらいになるのか、自社との競業にあたらないかなどにとどめ、必要以上に情報を求めないようにしましょう。
副業開始後に、労働時間や健康状態などを確認する
社員が副業を始めたら、過労によって健康を害することがないように、健康状態などを確認する必要があります。場合によっては、副業の労働時間や労働時間帯などを定期的に報告してもらっても良いかもしれません。
副業の内容や業務量などに変更が生じた場合には、決められた手続きに基づき報告してもらうようにすると良いでしょう。
まとめ
副業解禁は懸念事項が多いように感じられますが、事前にしっかり準備をすることで、会社と社員、双方にメリットがあります。裁判例から見ても副業の全面的禁止は違法と判断される可能性があります。社員とのトラブルを防ぐために、副業容認のルールづくりをスタートさせることが推奨されます。
副業の容認範囲や手続きなどを決める際には、社員とコミュニケーションをしっかりとって、意見を吸い上げる必要があります。会社と社員、双方が納得できるルールをつくって、思い切って副業を解禁してみてはいかがでしょうか。
(画像はphoto ACより)