服務規律を違反すると懲戒処分の可能性も?義務について知っておくべきこと
近年、働き方に対する価値観が多様化しつつあります。新しい働き方を尊重しつつも、労働者には、企業に属している限り守らなければならないルールが多く存在します。
今回は労働者が働くうえで守らなければならない「服務規律」についてご紹介いたします。
服務規律とは
服務規律とは、企業秩序を保つために労働者が守るべきルールのことをいいます。一般的に就業規則の一部であり、業務中の行為や態度から社内での違反行為など、その内容や項目は企業によって異なります。
企業は、労働者に守ってほしいと思う規律を服務規律に定めますが、その内容は労働基準法に基づいており、矛盾が生じないように服務規律を定める必要があります。企業の運営に沿った服務規律を作成することで、労働者の管理をしやすくなるというメリットがあります。
服務規律には、大きく分けて「業務遂行上の遵守義務」と「労働者としての遵守義務」の2種類があります。
業務遂行上の遵守義務とは
業務遂行上の遵守義務とは、業務を行ううえで守らなければならない義務のことで、職務専念義務と誠実労働義務があります。
・職務専念義務
就業時間中において、労働者は職務に専念しなければなりません。したがって職務とは関係のないことをしてはならないとされています。職務に専念するといっても、肉体と精神の全てを業務に費やすことを要求しているものではありません。職務に専念しているか否かは、職務内容や状況により判断されます。
・誠実労働義務
労働者は、使用者や管理者が指示した命令に対し、誠実に従って業務を行うことが義務とされています。しかし、指示や命令が業務に必要のない場合や、違法なものである場合は従う義務はありません。さらに、使用者が指示した内容が、労働者の生命や身体に危険をもたらすことが予想される場合も同様です。
労働者としての遵守義務
労働者としての遵守義務とは、その企業に属する労働者として、ふさわしくない行為をしないように守るべき義務であり、企業秩序遵守義務と秘密保持義務があります。
・企業秩序遵守義務
企業は多くの労働者が業務を行っており、個人が勝手な行動をとっては、企業の利益を生み出すための運営や存続が成り立ちません。そのため、労働者1人1人が企業秩序を乱さないように行動する義務があります。企業秩序を乱すハラスメント行為や、飲酒運転など会社の名誉を傷つけるような行為はしてはいけません。
・秘密保持義務
秘密保持義務は、企業の内部情報や個人情報を外部に口外したり、SNSやブログなどで情報を流出させたりしてはならない義務をいいます。悪意はなかったとしても、信用を失う行為であり、企業にとっては重大な損失です。なお、秘密保持義務は雇用契約の終了した退職後であっても、守らなければいけません。
服務規律を違反すると
服務規律を違反し、その行為が企業秩序を大きく乱していると判断された場合、懲戒解雇処分とされる場合があります。ほとんどの企業では服務規律を定める際に、違反行為に対しての罰則規定も定めています。罰則の内容は、労働者の服務規律違反で企業が受けた損失の大きさによって決められています。
ただし、服務規律違反したからといって、企業は労働者を自由に懲戒処分することはできません。その理由は労働契約法15条に基づいており、懲戒処分を濫用することは禁止されています。
懲戒解雇処分を下すための満たすべき要件は、以下の通りです。
・就業規則に服務規律違反についての規定があること
・懲戒処分に該当する行為について処分の内容が過去の例や他の労働者と平等であること
・処分が重複していないこと
・懲戒処分の手続きが遵守されていること
公務員の服務規律
公務員には、民間の労働者以上の服務規律が設けられています。特に、地方公務員と比べて国家公務員においては、国民全体の奉仕者として、厳正な服務規律を確保することが重要とされています。
昨今における教職員の不祥事根絶のため、各自治体によっては、教育委員会が服務規律確保のためのチェックリストを配布し、自己点検を行っています。
まとめ
服務規律は企業の運営を存続させるうえで、労働者が必ず守らなければならないルールです。企業やその他の労働者を守るために、服務規律を違反する労働者に対しては、厳しい処分も必要です。
労使間のトラブルを防ぐためにも、服務規律を正しく定め、労働者全員に徹底した周知を行い、企業秩序の維持に努めましょう。
(画像は写真ACより)