研究開発税制の検討

研究開発税制とは、企業が研究開発を行っている場合、法人税額から、試験研究費の額に税額控除割合(6~14%)を乗じた金額を控除できる制度です。総額型と呼ばれる部分は、決して小さい金額ではありません(法人税額の25%という控除限度額あり)。企業の研究開発投資を維持・拡大させ、イノベーションを促し、成長力・国際競争力の強化を目的としています。では、試験研究費の範囲とはどのようなものでしょうか。

研究開発費等に係る会計基準での定義では、
・ 研究とは、新しい知識の発見を目的とした計画的な調査及び探究
・ 開発とは、新しい製品・サービス・生産方法(以下、「製品等」という。)についての計画若しくは設計又は既存の製品等を著しく改良するための計画若しくは設計として、研究の成果その他の知識を具体化することとされています。
https://www.fsa.go.jp/p_mof/singikai/kaikei/tosin/1a909e2.htm
(平成10.3.13 企業会計審議会)

税法では、
製品の製造若しくは技術の改良、考案若しくは発明に係る試験研究のために要する費用
対価を得て提供する新たな役務の開発に係る試験研究として一定のもののために要する費用となっています。(措法42の4⑧一、措令27の4②、措通42の4⑴-1~3)

税法の定義の方が、企業会計の研究・開発と比較すると研究費の範囲が広くなっています。研究・開発に含まれない典型例(実務指針26)としては、製品を量産化するための試作、製品の品質改良(工業化研究)、製造工程における改善活動は、会計上の定義から研究・開発にはなりませんが、税法上の試験研究のために要する費用には含まれることになります。

具体的な税額控除の対象となる費用は、以下のとおりとなっています。
⑴ 原材料費
a 試験研究のために消費した原材料費が対象
b 消費した年度で控除対象(試験研究の過程に投入した年度)
c 期末棚卸が必要
・ 試験研究のために消費した原料・材料は、全て対象
※製品の製造に使用する原材料と同じものを使う場合には区分管理、消費日・数量等を記録
⑵ 人件費(専門的知識をもって試験研究の業務に専ら従事する者に係るもの)
• 給料(諸手当を含む)
• 通勤費
• 賞与
• 健康保険料、厚生年金保険料の会社負担額
• 企業年金料の会社負担額
• 雇用保険料の会社負担額
• 労災保険料
• 退職金
• 社宅の費用
• その他福利厚生の費用
※ 賞与引当金繰入額や退職給付引当金の繰入額など、法人税法上損金とならない費用は、繰入れた年度では税額控除の対象とならない。しかし、実際に賞与や退職金を支払った年度では税務計算上損金に算入されるため、支払った年度で、試験研究費として税額控除の対象となる。試験研究に携わった社員ごとに、日々の作業日報の記録作成(試験研究の内容と試験研究以外の作業内容と作業時間)
a 専任研究員
・専門的知識をもって試験研究に専ら従事する者の人件費
・研究者(専従の研究補助者を含む)。
b 兼任研究員
・ 普段は製品製造などに携わっている社員で必要に応じて試験研究に携わる者の人件費についても税額控除の対象。(平成15年12月25日 中小企業庁から国税庁への照会に対する回答)
〔要件〕
イ 試験研究プロジェクト期間のうち、その者の担当業務が行われる期間、担当業務に専従
ロ 当該担当業務が当該試験研究に欠かせないもの、かつ、その者の専門的知識が担当業務に不可欠であること
ハ 当該試験研究の従事期間が、連続又は間隔をおきながら、実動で20日以上
二 当該試験研究業務への従事状況を明確に区分、試験研究業務に係る人件費を適正に計算すること
※ 兼任研究員の年間の総人件費を年間総労働時間で除し、試験研究に携わった時間を乗じた額が対象
⑶ 経費
原材料費および人件費以外の費用で、外注費、減価償却費、地代家賃、リース・レンタル料、水道光熱費、通信費、旅費交通費、消耗品費、新聞図書費、修繕費等
※試験研究のために要したのであれば、税額控除の対象となる。
a 試験研究のためだけに、要した経費(個別費)
b 試験研究活動と製造活動その他のために共通してかかった費用(共通費)を一括し又は分類したうえで、適当な配賦基準を用いて試験研究のために要した額を算出。
※共通費を控除対象とするためには、配賦計算が必要。
⑷ 委託試験研究費
他の者に委託して試験研究を行う個人又は法人が、その試験研究のために委託をうけた者に対して支払う費用。委託研究費は、原則として委託研究が終了して結果報告を受けた年度で税額控除の対象となる。
⑸ 試験研究用固定資産の減価償却費、国庫補助金等の圧縮損(税務上の金額)
⑹ 試験研究用固定資産の取替更新に基づく除却損(臨時的、偶発的なものを除く)
⑺ 技術研究組合法により賦課される費用

試験研究費の選定する作業は、現場において大変煩雑になる部分はあると思われますが、制度として優遇される部分は、積極的に検討していくべきと思われます。ご不明な点等は、コンパッソ税理士法人にお問い合わせください。

参考国税庁HP:
試験研究費の総額に係る税額控除制度
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5442.htm

経済産業省HP: 研究開発税制の概要
https://www.meti.go.jp/policy/tech_promotion/tax.html
コンパッソ税理士法人 審理部 田中 秀和


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