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産業医の選定義務について

産業医の選任義務と従業員に対する会社指定医への受診命令

(1)産業医の選任義務

  一事業所あたり従業員が50名以上になると労働安全衛生法により産業医の選任義務が発生します(労働安全衛生法第13条および労働安全衛生規則第13条)。
  ※一事業所あたりとは、会社全体では無く本社や支店、工場など個々の事業場(同じ場所で関連する組織的な業務や作業を行う場所の単位)のことを言います。
   例えば、100名在籍の会社でも本社に40名、工場に40名、二つの支店に10名ずつ所属しているような場合、選任義務はありません。
   
  産業医は嘱託(非常勤)でかまいませんが、従業員数が1,000人(有害業務を行う事業
場では500人)を超えると専属(常勤)の産業医選任が必要です。
 ※産業医の主な業務として月1回(必要が少なければ2ヶ月に1回でも可)の職場巡視、衛生委員会への参加、過重労働者への面談などがあります。

 産業医の選任義務に違反しますと労働安全衛生法により50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。

(2)会社指定医への受診命令

  精神疾患や慢性疾患が疑われる従業員に対し、会社から医師への受診を命じること
が出来るかは過去にも裁判で何回か争われてきましたが、電電公社帯広局事件(最高裁
一小 昭和61.3.13判決)や京セラ事件(東京高裁 昭和61.11.13判決)等により、合
理的かつ相当な理由があれば、会社から医師への受診を命じることができるとされて
いますし、症状が特定できている場合などは、会社が疑う疾患の専門医を指定し、受診
を命じることも可能だとされています。

まとめ

産業医の選任義務と言われると会社にとってはコストばかりがかかり、メリットは無いと思われることが多ですが、従業員が何らかの健康障害を抱え、業務に支障が出た場合の事を考えると、大きなメリットが生じます。会社にとって最も相談しやすく、従業員に対しても受診を命じやすいのは、やはり会社が選任している産業医です。

コンパッソ社会保険労務士法人
社会保険労務士 田中 穣

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