成年年齢の民法改正に係る税制上の改正について
平成30年6月13日,民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げること等を内容とする民法の一部を改正する法律が成立し、令和4年4月1日から施行されます。
この改正の背景は、18歳、19歳の若者の環境整備により積極的な社会参加を促すことや、また女性の婚姻年齢を18歳に引上げ、男女の婚姻開始年齢を統一することとされています。
さて、この改正に伴い年齢要件が定められた他の法令についても改正がなされています。
そのうち税制上の改正について紹介させて頂きます。
1 相続税の未成年者控除
相続税の未成年者控除の対象となる相続人の年齢が「20歳未満」から「18歳未満」に引下げられました。
未成年者控除とは、適用対象者(20歳未満である一定の者)について、10万円にその者が20歳に達するまでの年数を乗じて算出した金額をその者の相続税額から控除する制度ですが、今回の改正により「20歳」の記載が「18歳」に改められます。
2 受贈者の年齢要件
次に掲げる制度における受贈者の年齢要件が「20歳以上」から「18歳以上」に引下げられました。
・相続時精算課税制度
・相続時精算課税適用者の特例
・直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の税率の特例
・非上場株式等に係る贈与税の納税猶予制度(一般措置・特例措置)
相続時精算課税とは、一定の要件により選択できる贈与税の制度であり、この制度の贈与者が死亡した場合、相続税の計算上、相続財産の価額にこの制度を適用した贈与財産の価額(贈与時の時価)を加算して相続税額を計算する制度です。受贈者の要件として「贈与者の推定相続人であり、贈与者の直系卑属である者のうちその年1月1日において20歳以上であるもの」と定められています。また、平成29年度税制改正により設けられた「相続時精算課税適用者の特例」により、制度の受贈者の対象が「その贈与をした者の孫」に拡大され、年齢要件として「その年1月1日において20歳以上である者に限る」と定められています。
・平成25年の税制改正により、贈与税の税率について一般税率とは別に「直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の税率の特例」(通称、特例税率)が設けられましたが、この特例税率の適用を受けることができるための受贈者の年齢要件が「その年1月1日において20歳以上の者に限る」とされています。
なおこれらの改正については令和4年4月1日以後に相続若しくは遺贈又は贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用されることとなります。施行日までまだ期間がありますが、頭の片隅に置いておく必要があると思われます。
法令の改正により複雑化する相続・贈与について、ご相談等がございましたらコンパッソ税理士法人にお問い合わせください。
出典)
法務省HP 「民法の一部を改正する法律(成年年齢関係)について」
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00218.html
財務省HP 相続税法の改正
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2019/explanation/pdf/p0492-0509.pdf
渋谷事務所 業務部 鶴岡大