意外と知らない「福利厚生」と「手当」の違い
似ているようで違う福利厚生と手当
労働者が会社に不満を感じ、転職する理由の1つになり得るのが福利厚生です。
法人向け福利厚生型家事シェアサービス「ショコラ(share of co life)」が2016年11月に実施した調査によると、東京・神奈川・千葉・埼玉在住で就業中の20歳から59歳の男女505名のうち、19%の人が現在の会社の福利厚生に不満を感じると回答し、32%の人が転職先を選ぶ際に福利厚生を重視するとしています。
優秀な労働者を確保するために、福利厚生を充実させる一方で、手当も厚くしている会社も少なくありません。福利厚生と手当は、労働者やその家族の生活を豊かにするものという点では共通していますが、課税対象になるか否かなどに違いがあります。今回は、福利厚生と手当の違いについて見ていきます。
福利厚生とは
福利厚生は、法律によって使用者に義務付けられている「法定福利厚生」と、労働者が会社に属し、働くことによって得られる「法定外福利厚生」の2種類があります。労働者が福利厚生に不満があるといった場合、一般的には「法定外福利厚生」のことを指します。
福利厚生制度の対象は、その会社で働く全ての労働者が対象となります。対象が一部の労働者に限定されている場合は、原則として福利厚生とは認められません。
会社によっては、パートやアルバイトを福利厚生制度の対象外にしている場合もありますが、パートタイム労働法では、対象の範囲をパートやアルバイトにまで拡充するように配慮を求めています(参考:パートタイム労働法の改正について)。
厚生労働省が平成29年2月28日に公開した「平成28年就労条件総合調査」によると、法定外福利費にかかる労働者(常用労働者)1人当たりの1か月平均は6,528円となっています。
尚、法定外福利費(6,528円)の内訳を見ると、「住居に関する費用(3,090円)」が最も高く、「医療保険に関する費用(877円)」、「食事に関する費用(616円)」、「私的保険制度への拠出金(552円)」、「文化・体育・娯楽に関する費用(383円)」が続きます。
手当とは
一方、労働者に支給される職務手当や、家族手当、残業手当などの手当は、原則として賃金に含まれます。通勤手当や宿直手当など一部非課税のものもありますが、原則として課税対象になります。そのため、社会保険料や所得税などの控除額を決定する際には、手当額を含んだ賃金で計算する必要があります。
また、手当には業務の内容に応じて支給される「職務関連手当」と、労働者やその家族の生活を配慮して支給される「生活関連手当」の2種類あります。いずれも、原則として条件に当てはまる労働者にのみ支給され、福利厚生制度のように全ての労働者を対象にしているわけではありません。
尚、手当には「固定的賃金」の含まれるものと含まれないものがあります。「固定的賃金」とは、勤務時間や仕事の成績によって変動せず、一定額が毎月継続して支給される報酬のことを指します。
一般的に、役職手当や家族手当、住宅手当、勤務地手当などが「固定的賃金」に含まれ、残業手当、宿日直手当、皆勤手当、精勤手当などは「非固定的賃金」に該当します。
「固定的賃金」に変動があった場合は、労働者の標準報酬月額も改定する必要がありますが、「非固定的賃金」に変動があっても、改定の対象とはなりませんので注意しましょう。
まとめ
原則として、福利厚生制度は会社で働く全ての労働者を対象にしているのに対し、手当は条件に該当する労働者のみを対象としています。両者を充実させることで、労働者は仕事にやりがいを感じ、安心して働けることでしょう。
手当の変動に当たっては、標準報酬月額の改定が必要なるケースもあります。給与計算業務が正しく運用できているか、この機会に見直してみてはいかがでしょうか。
(画像はphoto ACより)