ひとり経理の効率化術|RPAとは?経理業務への導入で期待できるポイント
RPAという言葉を耳にしたことはありますか?RPAとは、パソコン上で動作するソフトウェアです。「RPA導入って本当に効果があるの?」 「うちの会社にRPAは必要なのかな…」 そう疑問に思う方も多いと思います。
実際、RPA導入を正しく行えば、大幅な業務効率の向上とコスト削減が実現できます。
本記事では、RPA導入のメリットやポイントについて詳しくご紹介していきます。
RPAとは?
RPAとは、バックオフィスやホワイトカラーの定型業務を自動化、効率化するソフトウェアです。「Robotic Process Automation」の略で、パソコンを使用して人間が行う作業を、手順を記録したソフトウェアロボットが再現することで業務を自動化します。近年はさまざまなRPAツールが増えており、システムを構築するほど複雑ではなく、ITの専門家がいなくても導入・運用が可能です。
RPAを活用すれば、人員を他の業務に振り分けられ、組織全体の生産性向上につながります。
RPA導入のメリットと注意点
RPAを経理業務へ導入すると、主に5つのメリットが期待できます。
ミスの削減・・・・ヒューマンエラー(人的ミス)を防ぎ、正確性を向上させる
人材の有効活用・・定型業務から解放され、コア業務に集中できる
処理速度の向上・・24時間365日実行可能で、作業量に負けず高速処理が可能
コスト削減・・・・人件費や関連コストを抑えられる
導入の容易さ・・・専門知識がなくても活用可能
RPAは定型的な業務の自動化に最適です。したがって、判断をともなう業務や突発的な事例が発生する業務だと、導入が複雑化したり、正しい処理ができなかったりするため、導入を避けましょう。
RPAで自動化できる経理業務
RPAは多くの経理定型業務を自動化できます。主な業務内容は次の通りです。
- 入金チェック
- 振込リスト作成
- システムをまたいだデータ管理
- 請求書作成
- 会計データ処理
- 出金管理表の作成
- 交通費金額チェック
経理業務は通常、ミスできないという精神的な負担が大きいものです。RPAを導入することで、データ照合、情報収集、システム間のデータ転記、計算処理などを正確かつ効率的におこなえます。さらに、ヒューマンエラーを減らし、作業時間を短縮可能です。
また、RPAは複数のシステムをまたいだ処理も可能で、より複雑な業務も自動化できます。
RPAの活用事例
RPAは経理業務と相性がよいとされています。ここでよくある具体的な活用事例を2つ、紹介します。
RPAの活用事例 | 定型業務の自動化
A社は複数の仕入れ先から日々大量の請求書を受け取ります。従来、請求書を受け取った経理担当者は次の4工程を手作業でおこなっていました。
- 請求書PDFファイルを開く
- 請求書の内容を確認
- 社内システムに請求情報を入力
- 支払い予定表に反映
しかし、RPAを導入した結果、以下の3工程については自動化に成功したのです。
- 請求書PDFから自動でデータを抽出
- 社内システムへの自動入力
- 支払い予定表の自動更新
工程数が大幅に減ったことで作業時間が短縮されただけでなく、転記ミスもほぼなくなりました。その結果、経理担当者はデータチェックや異常値の確認など、より付加価値の高い業務に集中できるようになったのです。
RPAの導入は、企業の経理部門の業務効率を飛躍的に向上させ、人的資源のより効果的な活用を可能にするでしょう。
RPAの活用事例 | 勤労怠管理・給与計算自動化事例
B社は、従業員の勤怠管理や給与計算にかかる次の4工程を、RPA導入前は手作業でおこなっていました。
- Excel、CSV、紙の勤務表など様々な形式で勤怠データを受領
- データを手作業で統一フォーマットに変換
- 給与計算システムに手動でデータ入力
- 計算結果を確認し、必要に応じて修正
RPA導入後、自動化された工程は次の5つです。
- 勤怠システムから自動でデータ取得
- AI-OCRを活用し、紙の勤務表からもデータを自動抽出
- 取得したデータを自動で統一フォーマットに変換
- 給与計算システムへ自動入力
- 異常値の自動検出とフラグ付け
RPAの導入により、作業工程が効率化され、担当者の数も大幅に削減できました。これは直接的な人件費削減にもつながります。また、労務管理の複雑なケース対応、従業員からの問い合わせへの対応、人事制度の改善提案など、高度な判断力と専門性を活かした業務に十分な時間を割けるようにもなりました。
RPAの導入は、B社の人事部門に効率性と生産性の向上をもたらし、より戦略的な人材管理への変革を可能にしたのです。
RPA導入におけるポイント
RPAを経理業務に導入する際の重要なポイントは、次の4つです。
1 | 業務の可視化 | 業務の手順を詳細に洗い出し、自動化する範囲を明確にする |
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2 | 小規模な定型業務から開始 | リスクを抑えつつ効果を検証するためには、スモールスタートがベスト |
3 | ベンダーサポートの活用 | 導入時の講習やトラブル対応など、充実したサポート体制を持つベンダーを選ぶ |
4 | RPA人材の育成 | 社内でRPAのスキルと知恵を絞り、より効果的な活用を目指す |
RPA人材の育成については、人材派遣を活用する方法もあります。導入後、一定期間でRPA人材の派遣契約を行います。指導役として実際に運用しながら、他の社員も知識とスキルを学ぶという方法です。
これらのポイントをしっかり抑えることが、RPA導入の成功への鍵となるでしょう。
RPA導入にプログラミングの知識は必要?
扱いやすいRPAツールが増えたと言われるものの、効果的な導入にはプログラミングの基本的な考え方が役に立ちます。非IT専従者向けのサービスを利用すれば、プログラミングの知識がなくても、RPAを基本の形で導入する場合は難なく操作できるでしょう。しかし、自社に合わせて仕様を変更する場合は、プログラミングの知識が活きてきます。
ノーコードで利用できるRPAツールでも、プログラミングの考え方を知っている方が便利にRPAを活用できるといえます。
RPAとAIの違い
RPAとAIは、自動化技術として注目されていますが、その特徴は大きく異なります。
RPA | ・設定されたルールに従って作業を実行 ・業務自動化システムとしての機能 ・人の指示通りに動く「手」のような存在 |
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AI | ・自ら判断して作業を行う ・システムやデバイスに代わって機能 ・人の代わりに考える「脳」のような存在 |
つまり、AIは「考える」部分を担い、RPAは「手を動かす」部分を担うというように分けられるでしょう。
ただし、高度なRPAにはAIが搭載されているものもあり、それぞれの境界線は年々薄れているのが現状です。今後、AI搭載のRPAが発展すれば判断や分析など、考える力が必要な業務も自動化できる可能性があります。
まとめ
RPAとは、定型業務を自動化できるソフトウェアです。定型業務が多い経理との相性がよく、その効率化には大きな可能性を秘めています。定型業務の効率化だけでなく、ミスを削減し、人材を有効活用できるなどのメリットも多く、入金チェックや請求書作成など煩雑な業務にも適用可能です。
導入におけるポイントを抑えてスモールスタートで導入すれば、作業効率も徐々にアップします。また、 プログラミングの基礎知識があるとさらに効果的に活用できるでしょう。経理業務の生産性向上に向けて、RPAの導入を検討する価値は十分にあるといえるでしょう。