棚卸資産(在庫)の管理について
棚卸資産とは、販売目的等で仕入れた物品のうちまだ社内に留まっているものをいいます。
小売業などにおいて棚卸資産の管理は重要だということは、耳にしている方も多いと思います。棚卸資産を管理しないとどのような影響があるのか、どのようなことを考えて管理していけばよいのかをご説明します。
1 資金繰りが悪くなる
棚卸資産とは仕入れた物品のうちまだ販売等されていないものですからお金は先に出ていきます。
棚卸資産が多ければ多いほど資金繰りは悪くなります。
2 棚卸資産の管理に経費が掛かる
棚卸資産は在庫として店舗や倉庫などに確保しておくものなので、それを管理するために下記のような経費もかかります。
・棚卸資産を保管するためにかかる倉庫代や保管料
・棚卸資産を移動するためにかかる運送費や荷造り費
・棚卸資産の数量や価値を確認するためにかかる棚卸作業費
・棚卸資産の品質や安全性を維持するためにかかる空調代や消耗品費など
3 長期滞留在庫の廃棄リスク
棚卸資産の中でも長期滞留在庫になるものもありまが、お金をかけて管理した結果、品質劣化や流行遅れなどによって廃棄してしまうリスクもあります。
4 機会損失の発生
棚卸資産が少なければ上記リスクは少なくなります、しかし少なすぎることによって商品の販売チャンスを失う機会損失が発生する可能性があります。
(例1)3日間のセールで2日目に商品Aを売り切り3日目は「完売御礼」の札を貼った。
「完売」という言葉は良い響きがありますが、もう少し在庫があれば3日目も販売するチャンスがあったということになります。
過大な在庫をつくらず、機会損失もできるだけ避けるためには、適正在庫を把握する必要があります。
5 適正在庫の把握
適正在庫は、簡単に説明すると仕入れまでの期間の需要数+発注から納品までの予備在庫となります。
(例2)商品A 基本月1回の仕入れ 一日の平均売上個数20個
追加発注から納品までの期間3日
例2の場合では、基本的に月1回の仕入れで1日の平均売り上げ数が20個なので20個×30日分の600個は仕入れが必要となります。また万が一多く売れて在庫がなくなった場合には追加発注が納品されるまでの期間が3日なので20個×3日分の60個を合わせた660個の在庫があれば機会損失も回避できることになります。
適正在庫量=20個×30日+20個×3日=660個
実際には日々の売上は一定ではないため市場の状況や経験による予測が必要となります。
6 在庫回転率の把握
上記の計算のほかに在庫回転率による管理もあります。
在庫回転率の計算式例 在庫回転率=期間売上原価/期間平均在庫金額
(例3)通年商品A 年間売上原価 1,500,000円 平均在庫 250,000円 在庫回転率6回
=1年に6回(2か月に1回)在庫が回転している
例3の場合では、2か月に1回在庫が回転しているので、それに合わせて仕入れをすればよいことになります。通年販売できるものであれば多少在庫が残っていても大きな問題はありません。
(例4)季節商品B 期間売上原価 1,600,000円 平均在庫 200,000円 在庫回転率8回
=期間中に8回在庫が回転している
例4の場合は例3より在庫回転率も高く一見良いように見えますが、残った在庫は次のシーズンまで保管することになり、保管コストだけでなく劣化や流行遅れのリスクも高まります。在庫がもっと少なくなるように仕入れを調整しておく必要があります。
在庫管理については、こうしておけば大丈夫という100%のものはありません。しかし上記のような考え方をすれば、最低限のリスク対策はできると思いますので、まだ管理していない場合にはぜひ取り組んでみてください。
横浜青葉事務所
日高 健