明示しなければならない労働条件の内容と明示の方法について
従業員を採用する際、使用者は法令の定めに従い労働条件を明示するように義務付けられています。
きちんと労働条件を明示しなければ、使用者が法律違反となり、法的制裁を科される場合もあるので注意しましょう。
また、2019年4月に施行された法改正により、従来は労働条件は書面にて交付されていましたが、所定の条件を満たした場合は、FAXや電子メール、SNSによる労働条件の明示も認められるようになりました。
今回は、使用者が従業員を採用した際の労働条件の明示に関する決まりや明示方法について解説いたします。
労働条件通知書
労働条件通知書とは、使用者が従業員を採用した際に、従業員と交わす契約書で、労働条件が明示されたものです。労働条件通知書のほかにも、労働契約書、雇用契約書と呼ばれる場合があります。
労働条件通知書は正社員だけでなく、パートやアルバイトを採用した場合にも、書面に賃金や、労働契約の期間、就業場所、従事する業務の内容などの労働条件を明示したものを書面にて通知しなければなりません。
・労働条件の明示方法
労働条件は書面での通知が原則となっていますが、2019年に労働基準法が改正されたことにより、労働条件の明示方法に選択肢が増えました。
労働者が希望する場合は書面以外にも、FAXを利用して送信する方法、電子メールなどで送信する方法、SNSのメッセージ機能などを利用した電気通信で送信する方法が可能になりました。
絶対的明示事項
絶対的明示事項とは、労働契約が締結する際に、雇用主が従業員に対して、必ず明示しておかなければならない以下の項目で説明する労働条件や事項のことを指します。
①労働契約の期間について
労働契約に期間を有している場合は、その期間を記載しなければいけません。期間を定めて雇用契約を結ぶ際は、原則として3年を超えることはできず、定めていた期間をもって雇用終了です。
しかし、公認会計士や医師など高度な専門知識、技術、経験を有する労働者として認められたものに関しては例外として雇用期間を有する場合5年以内であれば可能とされています。
期間の定めがない労働契約の場合は、期間の定めがないということを記載しなければいけません。
②有期労働契約の更新基準について
期間を定めて労働契約を結んだ場合、期間満了後に完全に雇用終了ではなく、労働契約を更新する場合があるときは明示が必要です。
③就業場所および従事すべき業務について
最低限の内容として、雇用直後の就業場所および従事すべき業務を明示しなければいけません。
しかし、最低限だけの内容しか記載していない場合、使用者と従業員の間で労働条件を巡る争いが起きてしまう可能性があります。
そこで、将来の就業場所や従事する業務の内容や業務派遣などについて網羅的に明示しておく方が差し支えがないとされています。
④労働時間について
従業員(労働者)に適用される労働時間や労働時間帯などについて、具体的な条件を記載しなければいけません。
⑤賃金について
退職金を除く賃金の決定や昇給を除く賃金の計算方法、支払い方法、賃金の締め日、支払い時期についての記載が必要です。
⑥退職に関して
退職の事由や手続き方法、解雇に値する内容や解雇手続きの内容を記載しておく必要があります。
パート従業員に関する特則
パート労働法6条により、パートタイムの従業員を採用する場合は、上記で解説した絶対的明示事項に加えて、昇給の有無、退職手当の有無、賞与の有無、短時間労働者の雇用管理の改善などに関する相談窓口についても必ず明示しなければいけません。
相対的明示事項
相対的明示事項とは、従業員と労働契約を締結する際に、会社で絶対的明示事項のほかに、決まりがある場合、使用者が従業員に対して明示しなければならない事項のことを指します。
相対的明示事項はおもに、①退職金の有無、②賞与の有無、③作業用品など従業員が負担しなければならない費用の有無、④安全・衛生について、⑤職業訓練、⑥災害補償・業務外傷病扶助、⑦表彰・制裁、⑧休暇についての内容が当てはまります。
まとめ
今回は従業員と労働契約を結ぶ際に、明示すべき内容や明示方法についてご紹介いたしました。
適切な労働条件を確保し、明示することは従業員と使用者の間で労働条件を巡る争いを防ぐためには非常に重要です。
労働条件通知書は、会社の事情によって独自に作成できます。
法律の規定に沿った内容とするためにも、厚生労働省東京労働局が推奨している労働条件の雛形を参考にして作成するか、弁護士などの専門家にアドバイスを受けながら作成することをおすすめします。