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消費税について解説|経理初心者に教えるべき基礎知識

消費税は日本における主要な税制度の一つであり、消費税の管理は、企業の財務健全性を保つために極めて重要です。

経理責任者として、消費税に関する知識と実務を正確に理解し、それを部下に適切に指導することは、企業全体の税務コンプライアンスを守るために欠かせません。今回の記事では、消費税の基礎知識から具体的な計算方法、そして部下に教える際のポイントまで、詳細に解説します。

ぜひ最後まで読んでいただき、消費税の理解を深め、企業の健全な運営に役立ててください。

消費税の基礎知識

ここでは、消費税の基礎知識について紹介します。

消費税の概要

消費税は、商品・サービスの消費に対して課される税金です。一般的に、消費税は消費者が直接納税しているイメージがありますが、実際の納税義務は企業にあります。消費税は付加価値に基づいて課税されるため、企業側では取引ごとに正確な計算と管理が求められます。

経理担当者は、消費税に関する取引や納税の仕組み、スケジュールをしっかりと理解し、それを実務に反映させることが重要です。

消費税の仕組み

事業者は、消費者が商品購入時・サービス利用時に支払った消費税を一時的に預かり、後に国に納税します。事業者は売上に対する消費税から、仕入れや経費に支払った消費税を差し引き、その差額を納税します。この仕組みは、「仕入税額控除」と呼ばれます。

「仕入税額控除」とは、事業者が売上に対して受け取る消費税額から、仕入れや経費に支払った消費税額を差し引く仕組みです。この控除により、事業者は実際に負担する消費税額を軽減させています。

なお納税は、事業年度終了後2か月以内に税務署へ申告・納付します。また、前年度の消費税額が一定額を超える場合、中間納付が必要です。経理初心者に、概念を教える際には納付回数も併せて紹介しておきましょう。

中間納付の回数

消費税の中間申告・納付は、前事業年度の消費税額によって回数が異なるため、注意が必要です。

前事業年度の消費税の年税額 申告回数
国税48万円以下 0回
(ただし、任意の中間申告(年1回)が可能)
国税48万円超400万円以下 年1回
前課税期間の年税額の1/2
国税400万円超4,800万円以下 年3回
前課税期間の年税額の1/4ずつ
国税4,800万円超 年11回
前課税期間の年税額の1/12ずつ
参考:国税庁「中間申告の方法」、財務省「消費税の申告・納付制度の改正の経緯」

前事業年度の消費税額によって、納税するスケジュールが変更になる可能性があり、経理初心者が申告漏れを起こすリスクがあります。経理責任者は、毎年確認し、納税するスケジュールを把握しておきましょう。

消費税がかからない取引

消費税には、課税されない取引が存在します。非課税取引・不課税取引・免税取引に分類され、それぞれに異なる適用基準があります。経理責任者の方は、誤った税区分を採用しないためにも、経理担当者へ以下の取引を説明してあげましょう。

1.非課税取引

主な非課税取引は以下の通りです。

・医療サービス:病院や診療所での診療、治療などの医療行為
・教育サービス:学校教育法に基づく学校での授業料や入学金
・福祉サービス:社会福祉施設で提供される福祉サービス
・住宅の貸付け:1年以上の住宅の貸付け
・公的手数料:国や地方公共団体が提供する手数料、例えばパスポート発行手数料

税の徴収が好ましくないサービスや、社会政策的配慮から課税しない方がいいと考えられている取引が非課税の対象となっています。

2.不課税取引

不課税取引は、消費税法の適用対象外となる取引です。

・給与・賃金:雇用契約に基づく労働の対価
・寄附金、補助金:一般的に、対価として支払われるものがないため
・保険金、共済金:資産の譲渡等の対価といえないため
・株式の配当金:株主や出資者の地位に基づいて支払われるもの
・国外取引、寄附、贈与:対価を得て行うことに当たらないため

国外で行われる取引や、寄附や単なる贈与、出資に対する配当などの取引は課税の対象となりません。

3.免税取引

免税取引は、特定の条件を満たした場合に、消費税が免除される取引です。主に国際取引が対象となります。主な免税取引は以下の通りです。

・輸出取引:日本国内から外国への商品の輸出
・国際輸送:外国船舶や航空機による国際輸送サービス
・外国人観光客への販売:一定額以上の購入で、外国人観光客が免税を受けることができる商品

非課税取引・不課税取引・免税取引には、それぞれ異なる基準と対象があり、正確な区別と適用が求められます。経理責任者は、これらの取引を正しく教育することで、税務リスクを回避できます。最新の税務情報を常に確認しながら、経理担当者へ適切な教育を行いましょう。

消費税の計算方法と実務手順

ここでは、消費税の計算方法と具体的な作業について紹介します。

納税義務者

消費税の納税すべき対象者は、以下のように分かれます。

1.課税事業者

課税事業者は、前々年度の課税売上高が1,000万円を超える事業者です。さらに、特定期間の売上高が1,000万円を超える場合も課税事業者となります。(特定期間とは、原則としてその事業年度の前事業年度開始の日以後6か月の期間を指します。)

例:
2021年の課税売上高が1,000万円を超えた場合、2023年は課税事業者
2021年の課税売上高が1,000万円以下でも、2022年の事業開始から6か月の課税売上高が1,000万円を超えた場合、2023年は課税事業者

売上高の基準を満たす事業者は、消費税の申告・納付義務が発生します。経理責任者は、上記の基準を把握し、早めの税務準備が必要です。

2.免税事業者

免税事業者は、前々年度の課税売上高が1,000万円以下の事業者です。これらの事業者は、消費税の申告・納付義務が免除されます。ただし、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えた場合や、資本金が1,000万円以上の新設法人は納税義務が発生します。また、免税事業者でも自主的に課税事業者として申告することが可能です。

消費税の計算

消費税の納税額の計算方式には、「原則課税方式」と「簡易課税方式」の2種類があります。経理担当が中心となり自社に合った方式を選択する必要があります。

1.原則課税方式

原則課税方式では、売上に対する消費税額から仕入れに対する消費税額を差し引いて納税額を計算します。計算式は以下の通りです。

納税額=売上に対する消費税額−仕入れに対する消費税額

例えば、税込み9,900円で仕入れた商品を税込み11,000円で販売する場合、売上に関する消費税額は1,000円、仕入れに関する消費税額は900円となり、納税額は100円です。なお実際の業務においては、販売費や一般管理費にかかる消費税も考慮する必要があります。経理初心者には、経費の消費税処理の重要性について教えてあげましょう。

2.簡易課税方式

簡易課税方式は、中小企業向けの制度であり、売上高に対する「みなし仕入率」を用いて消費税額を簡便に計算します。この方式は、詳細な仕入れ情報の管理が不要で、業種ごとに設定されたみなし仕入率を適用します。主な業種とみなし仕入率は以下の通りです。

事業区分 みなし仕入率 該当する事業
第1種事業 90% 卸売業
第2種事業 80% 小売業
第3種事業 70% 製造業・農業・林業・漁業・鉱業・建設業・製造業・電気業・ガス業・熱供給業および水道業
第4種事業 60% 飲食業
第5種事業 50% サービス業、運輸・通信業
第6種事業 40% 不動産業、金融・保険業

なお、簡易課税方式を選択するためには、事業年度開始前日までに「簡易課税制度選択届出書」を税務署に提出が必要です。経理責任者は、経理担当者がしっかりと税務署に書類提出ができているか確認しましょう。

インボイス制度の重要性と基礎知識

ここでは課税事業者・免税事業者それぞれにどのような影響が出るのかを解説していきます。

インボイス制度の必要性

インボイス制度は、適格請求書等保存方式とも呼ばれ、消費税の仕入税額控除を正しく把握するために導入された制度です。この制度では、事業者が発行する請求書に、登録番号や取引内容、消費税額などの詳細な情報が記載される必要があります。なお、適格請求書を発行できるのは、適格請求書発行事業者に登録された事業者のみです。

インボイス制度の導入以前は、標準税率10%・軽減税率8%が混在しており、間違った仕入控除をするリスクがありました。そのため、事業者が取引の正確な消費税額の把握や、不正・ミスを防ぐために導入された背景があります。

経理責任者は、インボイス制度の重要性と具体的な手続きについて経理チーム全体に教育し、理解を深める必要があります。適格請求書の発行と保存、標準税率と軽減税率の区別、制度に基づいた適切な請求書発行、最新の法規制やガイドラインの確認などを徹底し、適切な消費税管理をしましょう。

インボイス制度の運用方法

インボイス制度の運用方法は、以下の通りです。

1. 課税事業者の場合

【適格請求書を発行する側】
課税事業者は、インボイス制度の下で適格請求書を発行し、取引先に提供する必要があります。請求書には、事業者の登録番号、取引内容、消費税額を明記しなければなりません。適格請求書の発行と保存が求められ、これによって仕入税額控除が認められる仕組みです。
経理初心者がよく間違えるポイントとして、登録番号や消費税額の記載漏れが挙げられます。特に、取引内容が詳細に記載されていないと適格請求書として認められない場合があります。
さらに、新しいルールとして税率ごとに端数処理が1回しかできないことも理解しておくべきです。例えば、8%・10%の税率が混在する場合、それぞれの税率ごとに1回ずつ端数処理を行う必要があり、それ以上の端数処理は認められません。この点は見落としがちなため、特に注意が必要です。
経理責任者は、定期的に発行された請求書をチェックし、誤りがないか確認することが欠かせません。新しい端数処理のルールについても、経理初心者にしっかりと教育し、実際の業務で正確に適用できるように指導しましょう。

【適格請求書を受領する側】
課税事業者は、取引先から受け取った適格請求書を保存し、仕入税額控除を受けるために適切な管理を行う必要があります。
経理初心者が間違えやすい点として、受領した請求書に不備に気づかない点があることが挙げられます。不備に気づかずに処理を進めてしまうと仕入控除ができなくなるため、経理責任者は経理初心者に受領した請求書の内容を細かくチェックするよう指導しましょう。また、不備が見つかった場合は、速やかに取引先に連絡し修正を依頼する手順を確立しておくことが大切です。

2. 免税事業者の場合

【適格請求書を発行する側】
免税事業者は、インボイス制度の下で適格請求書を発行することができません。そのため、取引先は仕入税額控除ができず、取引を見直される可能性があります。
経理初心者が間違えやすいポイントとして、免税事業者が領収書(適格簡易請求書)を発行しようとする場合があります。適格請求書を発行できないことを理解していないと、トラブルになる可能性があります。経理責任者としては、免税事業者の立場を理解し、適格請求書の発行ができないことを部下にしっかりと教育しましょう。

【適格請求書を受領する側】
免税事業者は、取引先から受け取った適格請求書を保存する義務はありませんが、将来的に課税事業者になる可能性がある場合は、適切に保存しておくことが推奨されます。
経理初心者が間違えやすい点として、適格請求書の保存が必要ないため書類管理が疎かになることが挙げられます。しかしながら、将来的な税務調査に備え、取引記録は適切に管理しておくべきです。経理責任者としては、免税事業者であっても経理担当者には取引記録の管理の重要性を教育し、整理整頓の徹底を図りましょう。

まとめ

消費税は企業の財務管理において極めて重要な要素です。この記事では、消費税の基本的な知識、具体的な計算方法、そしてインボイス制度の概要について解説しました。消費税の中間申告・納付は、前事業年度の消費税額に応じて納付回数が異なる点や、会計ソフト利用時の注意点など、経理初心者が間違えやすいポイントについても押さえておきましょう。

経理責任者は、これらの知識を深く理解し、部下に適切に指導すれば、企業全体の税務コンプライアンスを維持しながら、効率的な納税が実現できるでしょう。

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