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経理初心者に教えるべき基礎知識|源泉所得税について解説

経理業務において、源泉所得税の理解は極めて大切です。特に経理初心者にとっては、源泉所得税の基本的な概念や手続きは難しく、正確に理解することが重要になります。

この記事では、経理責任者が部下に説明するために必要な源泉所得税の基礎知識を詳しく解説。また間違えやすい点や手続き方法などについても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

なお、今回は定額減税については触れません。定額減税に関しては「定額減税 給与計算担当者はここに注意」に詳述していますので、興味のある方はそちらをご覧ください。

源泉所得税の基礎知識

ここでは、源泉所得税の基礎知識について紹介をします。

・源泉所得税とは
・源泉徴収の必要性
・源泉所得税の対象
・報酬・料金等にも源泉が必要
・納付期限
・納期の特例
・納付手続き

源泉所得税の計算は、日常生活ではすることのない税務計算です。まずは、基礎的なポイントについて、経理初心者に説明してあげましょう。

源泉所得税とは

源泉所得税とは、給与や報酬などの支払い時に、支払者である会社があらかじめ所得税を差し引いて国に納付する制度です。

所得税は、個人の所得に対してかかる国税であり、1年間の所得に応じた税金を国に納める必要があります。なお所得税の納付方法は、「申告所得税」と「源泉所得税」の2種類に分かれています。

申告所得税とは、1年間の所得とそれに対する所得税を自分で計算し、確定申告を通じて税務署に申告・納付する制度です。例えば、自営業者や副業をしている人が該当します。

一方、源泉所得税は、給与や報酬を受け取る際に、その支払者(例えば会社や個人事業主)があらかじめ所得税を差し引いて、代わりに国へ納付する仕組みです。例えば、会社員の給与から毎月差し引かれる所得税がこれに当たります。

源泉徴収の必要性

源泉徴収の主な目的は、納税者の負担軽減と税収の安定確保です。

会社員の給与から毎月源泉徴収される所得税によって、年度末にまとめて大きな税金を支払う必要がありません。これにより、納税者は月々少額ずつ税金を支払っており、負担が分散されています。

また、源泉徴収は税務署にとっても多くのメリットがあります。まず、申告漏れが減少し、税務署は正確な税収を確保できます。さらに、徴税手続きが簡素化されるため、徴税コストが削減。毎月の徴収により平準化もされ、安定した財政運営が可能になります。

このように、源泉徴収制度は税務署が効率的に税金を徴収し、企業や個人の納税負担を軽減する仕組みになっています。

源泉所得税の対象

源泉所得税は、特定の所得に対して適用されます。

以下に、代表的なものを挙げます。

給与所得:企業が従業員に支払う給与、賞与、手当など
退職所得:従業員が退職する際に受け取る退職金
利子所得:預金や債券から得られる利子収入
配当所得:株式や投資信託の配当金

源泉所得税は、給与や退職金だけでなく、利子や配当金にもかかります。

報酬・料金等にも源泉が必要

また上記以外にも、フリーランスの方や税理士・弁護士等の士業を営む個人に支払う報酬も源泉徴収の対象になります。

決算処理や登記変更などをした際には、上記の専門家に依頼し、請求書が届きます。その際には、企業側が報酬を源泉徴収して納税する必要があります。

なお交通費や出張費を負担する場合、一定の範囲内で、かつ直接ホテルなどへ支払うものは対象に含めません。実際に請求書を使って、源泉徴収の仕方を教えてあげましょう。

納付期限

源泉所得税の納付期限は、給与や賞与を支払った月の翌月10日までです。この期限を過ぎると、延滞税や加算税が課せられるため、必ず守ることを教えましょう。

源泉所得税の計算は、給与計算や請求書の突き合わせをしてから行う必要があるため、時間が確保しづらい特徴があります。経理担当者は、納付期限の1週間前に準備ができているか、毎月声掛けしてあげると効果的です。

特に、1月の納付は正月休みも含まれることから計算・準備する時間が少なくなります。例えば、12月の終わりに必要な書類をあらかじめ準備し、1月の初めにはすぐに作業に取り掛かれるように注意してあげましょう。

納期の特例

中小企業など一定の条件を満たす場合、源泉所得税の納付期限を半年ごとに延長する「納期の特例」を利用することができます。この特例を受けると、1月〜6月分を7月10日まで、7月〜12月分を翌年の1月20日までと、半年ごとにまとめて納付が可能です。

特例を利用することで、納付手続きの負担が軽減されます。ただし、半年分の勘定科目を整理する必要があるため、計算が煩雑になることもあります。特例を使う際には、関係する科目を一緒に見直し、再チェックしてあげましょう。また、原稿料や講演料、個人へ支払うデザイン料などはこの特例が受けられませんので、特例を利用している場合は対象外の支払にも注意が必要です。

納付手続き

源泉所得税の納付手続きは、税務署に対して所定の納付書を提出し、税金を納める形で行います。以下の手順で進めましょう:

1,所定の納付書に必要事項を記入
2,記入済みの納付書を税務署に提出
3,税金を納付(インターネットバンキングやクレジットカードを利用した電子納付も可能です)

電子納付は手続きが簡単で、時間や場所にとらわれずに納付できるため非常に便利です。例えば、オフィスから出ることなく手続きが完了し、手数料も安く抑えられます。初心者経理担当者にお願いする場合は、電子証明書の発行やe-Taxの設定をしてあげ、効率的な作業ができるように環境を整えることが大切です。

源泉所得税の管理で注意すべきポイント

源泉所得税の管理は、誤差やミスを防ぐために注意が必要です。

・納付期限を守る
・正しい計算書を選択する

以下のポイントを押さえておきましょう。

納付期限を守る
源泉所得税の納付期限を守ることは、非常に重要です。納付期限を過ぎると、延滞税や加算税が発生するため、定期的に納付期限を確認し、適切なタイミングで納付手続きを行うようにしましょう。

例えば、社内のスケジュール管理システムにリマインダーを設定したり、複数人で作業する体制にしたりして、部下をフォローできる仕組みを整えましょう。
正しい計算書を選択する
源泉所得税の計算には、正確な計算書を使用することが求められます。源泉徴収で使用される、納付書は以下の通りです。

1,利子等の所得税徴収高計算書
2,配当等の所得税徴収高計算書
3,給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(一般用)
4,給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(納期特例分)
5,非居住者・外国法人の所得についての所得税徴収高計算書
6,報酬・料金等の所得税徴収高計算書
7,定期積金の給与補てん金等の所得税徴収高計算書
8,上場株式等の源泉徴収選択口座内調整所得金額及び源泉徴収選択口座内配当等の所得税徴収高計算書
9,償還差益の所得税徴収高計算書
10,割引債の償還金に係る差益金額の所得税徴収高計算書

どの納付書も仕様が似ているため、違う納付書に記載してしまう恐れがあります。経理責任者の方は、初心者経理担当者が正しい納付書に記載しているか、都度確認してあげましょう。

効率的に計算したいなら給与計算のアウトソーシングがおすすめ

経理業務の中でも、給与計算は手間がかかる作業です。特に源泉所得税の計算には、正確性が求められます。そこで、給与計算を外部に委託することも一つの手段です。アウトソーシングを行うことで、次のようなメリットが得られます。

・時間の節約:煩雑な計算作業から解放され、本来の業務に集中できます。
・正確性の向上:プロフェッショナルが計算を行うため、ミスが減ります。
・コストの削減:社内での人件費やシステム導入費用を抑えることができます。

アウトソーシングを利用すると、経理業務の効率化と品質向上が期待できます。コンパッソグループでも給与計算のアウトソーシングを承っていますので、ご相談ください。

まとめ

源泉所得税の理解と適切な管理は、経理業務において欠かせない要素です。経理初心者には、基本的な概念や手続きをしっかりと教え、正確な納付をできるように教育することが大切です。ぜひともこの記事を参考に、源泉所得税の基礎知識を身につけてもらい、経理業務をスムーズに進めましょう。

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