飲食事業の皆さま 売上処理で損をする可能性も
新型コロナウイルスの流行により、新たにテイクアウトや出前を始めたという飲食店も多いかと思います。簡易課税制度を選択している事業者様、新たに始めたサービスを、これまでと同様の売上処理にしてはいないでしょうか?
飲食店業は一般的に、第四種事業ですが、商品の提供形態によって、事業区分が異なります。
1・店内で飲食 第四種事業
2・持ち帰り(仕入商品は含まない) 第三種事業
3・出前(店内に飲食スペース有り) 第四種事業
4・宅配(店内に飲食スペース無し) 第三種事業
5・仕入商品の販売 第二種事業
1には商品代の他、サービス料やチャージ料といった料金も含まれます。
5の仕入商品とは、喫茶店におけるケーキの持ち帰りやコーヒー豆の販売が該当します。2はこれに該当しない、店内製造の商品を販売する場合になります。
コロナ禍を期に、フードデリバリーサービスを始めたという飲食店もあるかと思いますが、こちらも考え方は3・4と変わりません。元々、店内での飲食が可能かどうかでその事業区分が決まります。
では、なぜ売上方法ごとに区分しなければならないのでしょうか。
簡易課税制度において仕入控除税額とみなされる金額は、実際の仕入控除税額を計算することなく、その課税期間の課税標準額に対する消費税額にみなし仕入率を乗じた金額が仕入控除税額とされます。つまり、みなし仕入率が高いほど消費税額は少なく済むのです。
事業ごとの区分とみなし仕入率を見てみましょう。
店内で飲食する一般的な飲食店では第四種事業ではみなし仕入率が60%ですが、2の持ち帰りだと70%となり、消費税上有利となります。
ところが、売上を事業ごとに区分していない場合、その売上に含まれる事業のうち、みなし仕入率が最も低い事業の売上として計算されます。たとえば、店内飲食と持ち帰りと仕入販売の3種類の売上があるのに、種類ごとに売上を分けていない場合、みなし仕入率が最も低い60%で消費税が計算されます。実際にどれだけ持ち帰りや仕入販売の売上が多くとも、売上を分けていないと、その分多くの消費税を納めなければならないのです。
コロナを乗り切るために新しく始めたサービスで損をしないためにも、是非一度、売上の区分を見直してみることをおすすめします。
参考:国税庁HP 簡易課税制度の事業区分
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6509.htm (5月14日閲覧)
TKC税務研究所「消費税簡易課税制度の仕組み―事業区分の判定から税額の計算・手続まで―」㈱TKC、2019年発行
川崎事務所
伊藤愛華