出向者がいるときの所得拡大促進税制
今回は出向者に給与の支給がある場合の所得拡大促進税制についてお話ししたいと思います。なお、内容は当該記事作成時に適用されている平成30年度創設のものとなっており、中小企業向け、大企業向けともに共通の取り扱いとなります。
① 賃金台帳がある法人にて集計
所得拡大促進税制を適用するための要件に、「継続雇用者給与等支給額」や「雇用者給与等支給額」が前年と比較して一定以上増加したこと、という要件(※)があります。
以下に用語の意義を記載いたします。
【継続雇用者給与等支給額】
継続雇用者(当期と前期の全ての月分に給与等の支給を受けた国内雇用者のうち、雇用保険の一般被保険者など一定の者)に対する当期の給与等支給額
【雇用者給与等支給額】
当期の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額
いずれも「国内雇用者」に対して支給された給与が対象となっています。
また、国内雇用者の意義は以下のようになっています。
【国内雇用者】
法人の使用人のうちその法人の有する国内の事業所に勤務する雇用者で、国内に所在する事業所につき作成された賃金台帳に記載された者を指します。~以下省略
従って、国内雇用者とは会社の従業員のうち、その会社の賃金台帳に記載がある人を指すことになります。
こちらは出向者等に対しても同様の取り扱いをしますので、出向元法人(出向者を出向させている法人)または出向先法人(出向元法人から出向者の出向を受けている法人)のうち、賃金台帳に記載がある法人にて給与が支給された場合に、上記の継続雇用者給与等支給額や雇用者給与等支給額として集計する必要があります。
(※)要件については適用年度によって詳細が異なります。
なお、令和3年度の改正では、給与等支給総額(企業全体の給与)が前年度比で1.5%以上とされています。
② 受け取った出向負担金を控除
出向元法人は出向先法人から出向負担金を受け取る場合があります。
①にてお話しした継続雇用者給与等支給額や雇用者給与等支給額においては、支給した給与から受け取った出向負担金を控除した残額を集計することになります。
出向者に給与の支給がある場合は、以上の2点について考慮いただければと思います。
経済産業省より出ていますQ&A集には、これらを図にしたものがございますので、よければそちらもご参照ください。
出典:経済産業省
平成30年度創設 賃上げ・生産性向上のための税制ご利用ガイドブック(大企業向け)
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/syotokukakudaisokushin/pdf/chinagezeiseiguidbook20210426.pdf
平成30年度創設 よくあるご質問Q&A集(大企業向け)
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/syotokukakudaisokushin/30pamphletQA.pdf
所得拡大税制ご利用ガイドブック(中小企業向け) 平成30年4月1日以降開始の事業年度用
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/syotokukakudaiguidebook.pdf
2020年4月17日更新 よくあるご質問Q&A集(中小企業向け)
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/syotokukakudaiqanda.pdf
令和3年度 経済産業関係 税制改正について
https://www.meti.go.jp/main/zeisei/zeisei_fy2021/zeisei_k/pdf/zeiseikaisei.pdf#page=39
出典:国税庁
出向負担金を支出した場合の租税特別措置法第42条の12の4《雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除》の適用について
https://www.nta.go.jp/about/organization/tokyo/bunshokaito/hojin/150617/01.htm
渋谷事務所 角 亮佑
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