確定拠出年金(個人型(iDeCo)、企業型)の受け取り方で異なる税負担について
確定拠出年金が初めて日本に導入されたのは2001年です。当初は日本人に根付くかどうかという問題はありましたが、それでも現状の加入者は企業型で約750万人、個人型で約200万人となっております。
また、2017年に個人型(iDeCo)の制度拡充が行われ、ほぼ全員が確定拠出年金に加入できるようになってからは何かと話題も尽きず、今や日本人の資産形成の一翼を担うとまで言われるようになりました。
ただ、その制度内容はかなり複雑で加入時、運用時、受取時にと多岐にわたって理解すべきポイントが散りばめられております。
そこで今回は確定拠出年金を一時金として受取時に係る税負担等にフォーカスしてご紹介させていただきます。
確定拠出年金の原則的な受取要件は、最初の掛金拠出後10年以上経過していれば60〜75歳まで(2022年4月より70歳まで→75歳までに受給開始期間が拡大)の間に受給することができ、受取方法と税務上の取り扱いについては下記のいずれかとなります。
1 老齢年金:5年以上20年以下の有期年金として分割(年1回、年2回、年4回、年6回のいずれか)して受け取る。(税務上は雑所得(公的)として課税され、公的年金控除が適用される。)なお、受給開始後5年経過した後は、繰上一時金として残りの年金資産をまとめて受け取ることもできます。
2 老齢一時金:一時金として一括で受け取る。(税務上は退職所得として課税され、退職所得控除が適用される。)
3 1と2の併用:老齢一時金と老齢年金を併用して受け取る。(税務上も1と2の併用となります。)
その中でも老齢一時金の受取りについては、いつ受け取るかで課税ルールが変わってきます。
複数の退職金を受け取る場合、退職所得控除対象期間(勤続年数)が重複しないように、同じ年および前年以前4年内の複数の退職金受取を対象に退職所得控除額を縮小調整することになっています。
一方で、確定拠出年金の老齢給付金を一時金で受ける場合に限り、通常の退職金受取に適用される4年内ではなく19年内(2022年4月より14年内→19年内に改定)までが調整対象とされています。(所令第70条1項2号)
これは企業からの退職金と確定拠出年金の一時金について重複して退職所得控除を適用させないためという背景があるかと思われます。逆に言えば、企業からの退職金を受け取る5年前に確定拠出年金を一時金として受け取ることで税負担が軽減される場合あるということにもなります。
今回は老齢一時金として受け取った場合の税負担についてのご紹介でしたが、そもそも確定拠出年金をいつどのように受け取るかという問題については、個々の状況によりベストな受け取り方が異なってきます。
個人的な考え方としては確定拠出年金の受取は生活の上で必要な時に受け取って使うという事が大事だと思います。生活の上で必要な時とは個人の価値観により様々な場面が想定されると思いますので、各個人のライフプランを策定しそれに見合ったお金の使い方の一部として確定拠出年金の出口戦略を考えると良いかと思います。
また、上記は現状(2023年4月)の税法であり、今後変更されることもあるためその変化への対応力も求められます。そのためにも受給タイミングが近くなりましたら各個人の置かれている状況を整理して、顧問税理士に相談するなど十分なシミュレーションをしておくことが重要だと感じています。
渋谷事務所
吉田 匡史