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クリニック開業のヒント2

渋谷に形成外科を開業して8年になる医師が、開業についてのヒントを教えて下さいました。
開業を考えている医師の方のご参考になると思います。

お話しをして下さった先生のプロフィール

緒方寿夫 先生
南平台緒方クリニック院長慶應義塾大学医学部卒後、25年以上にわたり臨床経験と最新医療の研鑽を重ね、慶應義塾大学医学部形成外科准教授を経て、平成24年5月南平台 緒方クリニックを開設。専門は「形成外科」、「美容外科」、「レーザー医学」、「顎顔面外科」、「皮膚腫瘍外科」などの専門医資格を持ち、安全かつ最適な医療を提供している。

 

<開業後に困ったこと よかったこと>

困ったこと
人事と労務管理が誰もが直面する1番の問題です。 問題が生じるたびに先輩開業医・社会保険労務士 ・ 弁護士に相談し、参考書も読んで学びました。 現在は、顧問社会保険労務士(税理士事務所所属)と別に、セカンドオピニオン役として別の社会保険労務士さんとも顧問契約を結びいつでも相談できるようにしています。

もう1つは集患です。 今でもずっと頭を悩ませています。 だれか良い方法を教えてください。 ホームページは作りましたが SEO (検索エンジン最適化)対策は行っていません。 先輩方にお聞きすれば皆 ロコミで少しずつ患者を増やすのが一番と言います。

私は ①外傷②腫瘍 ・ 眼瞼下垂 ・ 顔面神経麻痺③美容 の3本柱で集患を考えました。
①は、近隣の先生方にご紹介を請い ②腫瘍・眼瞼下垂・顔面神経麻痺は、皮膚科・眼科・耳鼻咽喉科・脳神経外科などの先生方にご紹介を請い、③は①、②で来院された患者さんに院内広報から口コミというパターンでやってきました。この方法では経営が成り立つのに4年かかりました。

困ったことの3つめは、収益の確保です。
そのため医療機器の選択は購入法も含め慎重に検討しました。 たとえばレーザーはランニングコストと安定性の面から Nd:YAG にこだわり(色素治療にルビーではなく YAG,脱毛に ALEX ではなく YAG という調子)、購入方法は、現金一括(融資で得た現金)リース・割賦、を事情に応じて選択しました。ちなみに、短パルスはMedlite C6(JMEC 社、日本)、長パルスは Ge叫e YagPRO (Synerom-Candela 社、米国)を現金購入しました。

診療では外傷、特に小児では、時間的にも医療材料的にも採算を考慮せず治療するように努めていますが、全体としては利益が出るよう、経費率の低い診療の割合をある程度保つように努めています。 ①手術、②非手術(レーザーや注入など)、③物販、など、主たる診療のおよその経費率は常に念頭に置いています。 当初 3 年間の収支は診療は黒字でも生活費込みではおよそ2,000 万円のマイナスでした。 税引き後の純利益から元金(銀行融資)を返済すると可処分所得が実際いくら残るのか…理解せずに開業前の生活を維持した結果です。 とはいっても開業後数年の可処分所得など計算できないので最悪の事態を想定して現金が底をつかないよう開業時に生活費対策を万全にしておくことが肝要です。

よかったこと
これまでにない新たな経験をしているという充実感が1番よかったことです。 これまでに得た知識や技術や経験が実際に患者の役に立っているという実感、それが収入となって生活に直結すること。 手伝ってくれるスタッフや仲間に多少の経済的支援ができること。母校やクラブヘの支援も勤務医のころより多少余裕をもってできました。 勤務医時代 車は乗り潰すものでしたが開業後は、2年半ごとに新車を乗り換える贅沢をしています。お金があるからではなく、減価償却という税制と市場価格とのバランスで考えるようになったからです。

 

 

次回は<開業を目指す若い形成外科医に伝えたいこと>についてお伝えします。

 

出典:「形成外科 63巻2号 2020年2月」克誠堂出版

 

【緒方先生のクリニック 『南平台緒方クリニック』】

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