日本企業が抱える人材育成の課題
やりっぱなしじゃ意味がない!
人材育成は企業経営上、重要な課題となっている企業が安定して経営をしていくためには、優秀な人材を育成していくことが必要不可欠です。しかし、人材育成に課題がある企業は少なくありません。
独立行政法人 労働政策研究・研修機構が平成28年に実施した「人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査」によると、「人材育成・能力開発について特に方針を定めていない」企業が17.9%にものぼり、従業員が9人以下の企業では25.2%が方針を定めていないと回答しています。
また、OFF-JTを実施している企業は全体の39.9%にとどまり、実施した企業の8.1%が効果がなかったと感じてます。
人材育成にコストと時間をかけても、やりっぱなしでは意味がありません。日本企業が抱える人材育成の課題と注意点を見ていきます。
【課題1】人材育成よりも業務が優先されている
労働政策研究・研修機構「人材マネジメントのあり方に関する調査」(2014年)によると、人材育成上の課題のトップは「業務が多忙で、育成の時間的余裕がない」となっています。
教育・指導を受ける側の若年層、教育・指導する側の中堅層ともに目の前の業務で忙しく、人材育成にまで手が回っていないのが現状です。また、指導する側も指導を受ける側も人材育成への意識が低く、せっかくコストをかけても効果を感じていない企業が少なくないのが現状です。
【課題2】人材育成ができる人材がいない
人材育成のための取り組みとして、「定期的な面接(個別計画・考課)」や、「指導係や教育係の配置」など、企業内の人材を活用する方法を取り入れている企業が多い一方で、多くの企業にとって、管理者の指導・育成力が課題になっています。
労働政策研究・研修機構「人材マネジメントのあり方に関する調査」(2014年)によると、管理職に不足している能力・資質として、61.7%の企業が「部下や後継者の指導・育成力(傾聴・対話力)」を挙げています。また、近年は管理職になりたがらない人も多く、企業内で計画的に人材育成を行っていくことが難しくなっています。
【課題3】非正規労働者の人材育成が十分ではない
正規雇用労働者に比べて、非正規雇用労働者の人材育成に時間とお金をかける企業は少ないのも日本企業の課題です。
59.4%の正社員が計画的なOJTを受けているにもかかわらず、正社員以外は28.6%しか受けていません。また、OFF-JTの実施率は正社員が69.9%なのに対し、正社員以外は34.1%にとどまります(参考:厚生労働省「能力開発基本調査」(2013年度))。
正社員以外で将来のキャリアアップのための教育を受けているケースも少なく、非正規労働者に対して、長期的な視点での人材育成が行われていることは少ないようです。
【注意点1】業務の多忙化を軽減する
優秀な人材が育つことで、業務が効率化できるようになり、収益の改善につながります。一時的にコストはかかりますが、人員を増やす、配置転換を行うなどして、人材育成に時間をかけられるように、労働者の業務の多忙化を軽減することが推奨されます。
【注意点2】企業全体で人材育成に取り組む
人材育成を効果的に行うためには、労働者の意識を変えることが大切です。人材育成を行う目的を明確にし、労働者のモチベーションを上げたうえで、人材育成に取り組みましょう。企業全体で人材育成に取り組む意識を高めていくことも重要です。
【注意点3】社外の資源を活用することも考える
企業内にノウハウがない場合や、人材育成ができる人材が育っていない場合は、社外の育成機関を利用しても良いでしょう。
生涯を通じてキャリアアップができるように、キャリア・コンサルタントを配置することも推奨されます。専門的なキャリア・コンサルティングは人材育成の新しい手法の1つで、労働者の自己啓発の促進や、労働者の仕事への意識を高められるなどの効果が期待されます。
まとめ人材育成は企業経営上、大きな課題ですが、労働者の意識は低く、期待したような効果が得られていない企業が少なくありません。
人材育成を効果的に行うためには、まずは労働者の意識を変えることが重要です。ご紹介した課題や注意点を参考に、労働者が自ら進んでキャリア形成に取り組める環境を整えてみてはいかがでしょうか。
(画像はphoto ACより)