ひとり経理のメリットデメリット 効率よく仕事をする秘訣とは
中小企業では、ひとりで経理業務をすべて担当する「ひとり経理」が珍しくありません。経理業務は利益を生まない間接業務とされるため、経費や人員削減の対象になりやすいのです。経理業務は作業が煩雑で工程数が多く、繁忙期には目が回るほどの忙しさです。全ての業務を滞りなく正確にこなすには「心配」や「不安」がつきまとうでしょう。しかし、ちょっとしたコツを知ることで、仕事がより楽になることもあるのです。
本記事ではひとり経理をするうえで大切にしたい「ひとり経理の極意」についてお話します。
ひとりで経理業務を担当するメリット
ひとり経理のメリットについて考えてみます。「デメリットしかない!」と考えがちですが、意外とメリットも存在するのです。
- スケジュールを立てやすい
- 経理状況を把握しやすい
- スキルアップできる
ひとり経理は、その名の通りひとりで経理業務を担当するため、仕事の進捗を管理できます。他の部署との兼ね合いもありますが、「来週は残業したくないから、今週は余分に進めておこう」など、自分の予定に合わせながら仕事を進められます。また、1人で担当する分、経理業務の情報が全て集約されるため、全体像を把握しやすくなるのです。
はじめは情報が点々と集まってくる感覚でしかないものの、月日の経過とともに社内事情等も理解できるようになり、点で把握していた情報が線や面で捉えられるようになるのです。内部事情を把握できると、新しい業務を始めるときや改善を要する場面などでとても役立つのです。これもひとりで経理を担当するから味わえる、大きなメリットであるといえます。
また、企業側としては人件費をおさえられることが最大のメリットです。1人雇用すれば数百万円も増加する人件費が、1人分か2人分かでは大きな差が生まれます。これが、中小企業にひとり経理が多い理由なのです。
ひとりで経理業務を担当するデメリット
次に、ひとりで経理業務を担当するデメリットについて考えてみましょう。
- ミスに気付きにくい
- 手が足りなくても助けが来ない
- 不正を監視する目がない
自分が担当した業務を見直しても、ミスには気付きにくいでしょう。時間が不足することが多く、見直しにかける時間がない環境でのチェックは、甘くなりがちでミスを見逃しやすくなります。しかし、電卓やパソコンなど、自分の目以外を活用してチェックする対策を取ることも可能です。
また、大きく遅れてしまった業務を立て直す場合でも、助けが来ません。自身のスピードアップで乗り越えるしかないのです。そうなる前に、タスク管理をおこなうときには「遅れを取り戻す日」を設定するなど、余裕をもつことが大切です。
不正を監視する目がない点については、経営者との信頼関係が重要になります。もっとも大前提として「不正はおこなわない」と肝に銘じている場合に尽きます。しかし、そう思っていても、うっかりミスをした内容や状況によっては「不正」と受け取られる場合もあるのです。不信感を与えないだけでなく、業務を効率的に進めるためにも「経営者との信頼関係」はとても重要なのです。
経理業務の透明性の維持
ひとり経理で業務の透明性を維持するため、気を付けることといえば「取引内容を明確にしておく」ことです。具体的には次の4つを確認してから処理をすすめます。
- 誰からの依頼で
- 何のために
- いつまでに
- どうするのか
とくに「誰からの依頼で」「何のために」の部分が腑に落ちなければ、何度でも確認すると良いでしょう。煙たがられることもありますが、あやふやなままでは「処理できません」と返却します。そのうちに誰もが、4つを添えて提出するようになるのです。
経営者から質問を受けたときは、必ず答えられることが大切です。理由を忘れてしまいそうな場合は、請求書や領収書の裏に確認した理由を記入して保管するのも良い方法です。
経営者との信頼を継続する
信頼関係が築けると、確認の手間が減り、任される範囲が広がるため、タスク管理が自由にできるようになります。しかし、信頼されていなければ、確認が増えるだけでなく、制約も増えて効率が悪くなります。そのため、経理業務をスムーズに進めるためには信頼関係がとても重要です。
ただし、信頼関係が構築できても安心して油断してはいけません。何年もかけて築き上げた固い信頼も、一瞬で崩れることがあるのです。そのため、常に誠実に取り組む姿勢を忘れないように心がけましょう。
まとめ
ひとり経理では「経営者との信頼関係」がもっとも重要です。信頼関係が築けていなければ、確認が増えるだけでなく、制限も増えて作業効率が悪くなります。
経営者との信頼関係を構築するには「経理業務の透明性」がとても大切です。
- 誰からの依頼で
- 何のために
- いつまでに
- どうするのか
この4つを確認して業務をすすめます。中小企業ではゆるくなりがちなこの部分を、透明にすることで「任せておけば安心」という信頼を得られるでしょう。
まずは信頼関係を築く努力をしてみましょう。経営者からの信頼は大きな「力」になるはずです。