社会福祉法人の予算作成で間違いやすいポイント
社会福祉法人の皆様におかれましては、厳しさを増す経営環境の中で日々奔走されていらっしゃることと思います。平成30年度も残すところわずかとなり、今期の決算とともに来年度の予算についても思いを巡らせる時期になっている頃ではないでしょうか。
私どもも数多くの社会福祉法人様とお付き合いをさせていただいておりますが、次年度の予算書を拝見させていただく際に特に注意する点があります。それは、固定資産の割賦購入をする予定がある場合です。
例を挙げてみましょう。来年度に300万円の車両を割賦で購入する予定があるとします。その場合に予算書にどう反映させるでしょうか?
<施設整備等による支出>
(固定資産取得支出)
車両運搬具取得支出 300万円
としたくなるところですが、残念ながらこれは正解ではありません。
実際に車両を割賦購入した場合の仕訳で考えてみましょう。300万円の車両を割賦購入した場合(割賦利息は考慮しないものとします)の仕訳は
(借方)車両運搬具 300万円 / (貸方)長期未払金 300万円
資金収支仕訳 なし
となります。この場合、流動資産と流動負債には全く動きがありませんので、資金収支の仕訳は計上されないこととなります。ではこの車両の取得に関するお金の動きは資金収支計算書にいつ反映されるのかというと、割賦金を支払ったときに反映されることになります。仮に300万円の車両を当期首に割賦期間5年で購入し、各期末に割賦金を60万円ずつ支払うという条件だとすると、各期末に下記のような仕訳を計上します。
(借方)長期未払金 60万円 / (貸方)現金預金 60万円
資金収支仕訳
(借方)長期未払金支出 60万円 / (貸方)支払資金 60万円
このように、車両を取得したにもかかわらず資金収支計算書に計上される資金収支科目は「車両運搬具取得支出」ではなく「長期未払金支出」となってしまうのです。しかも一括で300万円計上されるわけではなく、当期の割賦金の支払額である60万円のみが計上されることとなります。
もしも予算書に車両運搬具取得支出を300万円計上してしまっていると、予算と実績の対比をしたときに、計上される科目が違うばかりか金額についても240万円差額が出てしまうことになり、この差額は当期資金収支差額にもそのまま影響が出てしまいます。
耐用年数を経過したエアコンを一斉に入れ替えたり、建物のガラスを省エネ性能の高いものと取り換えたりする場合に割賦を利用する場合など、金額が大きく支払期間も長くなると当期資金収支差額に与える影響も一層大きくなりますので、予算作成の際には注意が必要です。
資金収支予算書は、今後1年間の法人経営をどのように行うかの道しるべであり、正確な予算書を作成することはPDCAサイクルを正しく回すための第一歩となりますが、ワンイヤールールの採用やリース会計の導入など、予算作成でも頭を悩ませる場面が増えてきているのではないでしょうか。お困りのことがありましたら、お気軽にコンパッソ税理士法人にお問い合わせください。
横浜青葉事務所 村山 健太