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副業兼業は促進する時代へ

副業兼業は促進する時代へ

新型コロナウイルスの感染拡大による休業やテレワークの導入がきっかけとなり、労働者にとって副業や兼業への関心が高まっています。

副業や兼業と聞くと、未だによいイメージを持たない方も多くいらっしゃることと思います。また、情報漏洩のリスクや本業が疎かになるという懸念等から、従来よりほとんどの企業は副業や兼業を許容しておらず、現在もその傾向は強いと言えます。

元々国は、昨今の少子高齢化に伴う労働人口の減少や働く人の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現する、という「働き方改革」を推進しています。その中で、副業や兼業は2017年の「働き方改革実行計画」において「労働者の健康確保に留意しつつ原則副業兼業を認める方向で普及促進を図る」と閣議決定されており、2018年からは厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を作成し、副業・兼業を希望する者が安心して副業・兼業に取り組むことができるようにと労働時間管理や健康管理等について示しています。よって、国はそもそも積極的に副業・兼業を推進している状況です。さらに、厚生労働省の現在の「モデル就業規則」では「労働者は勤務時間外において他の会社等の業務に従事することができる」とされています。

2022年1月に「マルチジョブホルダー制度」がスタートしたことはご存知でしょうか。複数の事業所に勤務する65歳以上の労働者が1つの事業所で雇用保険の被保険者要件を満たさなくても、2つ以上の事業所の労働時間を合算して要件を満たせば雇用保険に加入することができる、というものです。労働者から協力の申出があった場合は会社は拒否することはできず、手続に必要な書類作成に協力しなければなりません。これは該当の労働者が数社で働いている、つまり副業や兼業をしている状態であることを示しています。

ここで、自分の会社には65歳以上の労働者はいないので関係ない、と思った方がいらっしゃることと思います。実はそのような単純な話でもなさそうなのです。
 
このマルチジョブホルダー制度の現対象者は、引退せずまだ働きたいという意欲がある方、一方で身体機能や健康状態が不安な方、と個々の事情に大きな差がある年代です。このような事情から、既に現労働者の中で一番、兼業や副業をしていらっしゃる方が多い年代と言えます。この制度が新設された背景を探ってみると、少子高齢化や労働人口の減少という現状と、働く意欲がある高齢者を活用しようという動きが見受けられます。これはまさに「働き方改革」で挙げられている少子化対策や労働人口の確保という目的と一致します。

先述した通り、働き方改革で国は積極的に副業や兼業を推進しているにもかかわらず、ほとんどの企業はあまり積極的とは言えません。このマルチジョブホルダー制度からは、企業が積極的に導入しないのであれば、制度から固めていこうという国の意思が見え隠れします。つまり、まずは主に兼業や副業をしている中心的な年代から試験的に導入し、将来的にこの65歳以上という年齢要件が撤廃され、適用範囲が拡大されていく可能性があるのです。

先程挙げた厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」ですが、2022年7月にはさらに、自社が副業兼業を許容しているかどうかについて、ホームページ等で公表することが望ましい、という文言が追加されました。今後はますます、多様化する働き方に企業としても柔軟に対応できるよう社内整備を進めていく必要がある中、副業や兼業を許容促進していくことを視野に入れてみてはいかがでしょうか。もちろん、先述したような懸念点もあるかと思います。しかし、副業兼業を許容し促進することは、多様なスキルを持った人材の獲得、本業以外の業務に携わることによる労働者のスキルアップ、人材の定着を図るためのアピール、といった点で企業側のメリットが大きいと言えます。既に導入をしている企業も多数あります。労働者の働きやすい環境を整えるという観点からも、積極的に検討されてみてはいかがでしょうか。

高田馬場事務所
高野 幹子

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