労務系
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有給休暇5日間を消化させる方法
- 平成30年6月にいわゆる働き方改革法案が成立しました。この法案の成立によって労働に関する法律の様々な部分が改正されましたが、今回は年次有給休暇(以下、有休)に関する改正をご紹介します。
今回の改正によって、会社側は労働者に対して最低5日は有休を消化させなければならないこととなりました。この改正が施行されるのは平成31年4月1日です。
対象となる労働者は年に10日以上有休が付与される労働者です。
有休の付与日数は労働者の勤続勤務年数、所定労働日数などによって異なりますが、いわゆるフルタイムで働いている方については入社から6カ月を経過し、その間の出勤率が80%以上であれば10日付与されますので、入社から6カ月を経過すると有休消化義務の対象労働者となります。(週所定労働日数が4日以下のパートタイマーなどは付与日数が異なるため必ずしも対象となるとは限りません)
もちろん、既に有休を自分から5日以上消化している労働者は対象になりません。
会社側による有休消化義務はその期間が定められていて、有休付与日から1年以内です。有休は入社から6カ月経過すると最初に付与され、その後は1年ごとに付与されます。例えば平成31年4月1日入社であれば、平成31年10月1日に有休が付与され、以後、平成32年10月1日に付与、平成33年10月1日に付与、という具合に続きます。つまり、有休消化義務としては平成31年10月1日から平成32年9月30日の間に最低5日消化、平成32年10月1日から平成33年9月30日の間に最低5日消化、と続きます。
有休を消化させる方法としては2つ考えられます。
⒈ 個人別に有休日数を管理する
⒉ 計画的付与を導入する
⒈については文字通り、個人別に有休取得日数を管理し、取得日数が5日未満の労働者を対象として、会社側が取得日数を5日以上となるように有休取得日を指定してしまうことで消化義務を達成させる方法です。個人別に有休取得日を設定できるため柔軟性はありますが取得日数が5日未満かを管理し続ける必要があります。
⒉については従来から労働基準法39条6項に定められている計画的有休付与制度を使う方法です。
計画的有休付与とは、労使協定(会社側と、労働者側の過半数代表者との間で締結する協定)を締結し、予め有休を取得する日を決めておくことができる制度です。
計画的付与制度の対象となる労働者の範囲の決め方は全社一斉、部署ごと、個人別、いずれでも構いません。ただし、労働基準法では、計画的付与をすることができる有休は、有休のうち、労働者ごとに5日を超える部分に限られます。最低でも5日分は個人が自由にその取得する日を決められるようにする趣旨です。
この方法ですと、予め有休を取得する日を決めておくことができるので、5日分を協定しておけば、会社側の有休消化義務を達成することが可能です。しかし、労使協定で定めた取得日は容易に変更することができません。その点では⒈の方法が柔軟な対応が可能と言えますが、どちらの方法をとるのかは会社の実情によるところが大きいでしょう。
元々、有休取得者が多い場合は有休の5日以上の取得が自然に達成されている場合が多いでしょうから、⒈の方法でも十分に対応できるでしょう。
有休取得者が少ない場合は計画的付与制度によって大型連休の前後に1日プラスして消化するなどして5日の消化を図ることも1つの方法です。
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