所得税と住民税で異なる課税方式を選択するメリット

最近のお客様との話題から
~ 所得税と住民税で異なる課税方式を選択できる手続きとは? ~  社員 黒田榮治

上場株式等をお持ちのお客様から、所得税等の確定申告を間近に控え「上場株式等の配当所得や譲渡所得」の課税についての相談を受けました。
平成29年度税制改正で、所得税と住民税で異なる有利な課税方式を選択できる手続きが明確になった点について、具体例を用いてご説明いたします。

納税者は従前より、上場株式等の配当所得や譲渡所得(特定口座で源泉徴収選択)について「申告不要制度」「申告分離制度」「総合課税」の3つの課税方式から任意に選択することができました。平成29年度税制改正により、納税者が所得税と住民税で異なる課税方式を選択することにより、積極的に有利な方式を選択できる手続きが明確になりました。
(適用は、29年4月1日からの住民税から適用になります。)

改正前においても、所得税と住民税で異なる課税方式を選択できましたが、手続きが明確にされていませんでした。
そのためこれまで多くの納税者は、所得税の確定申告書を提出し、住民税の申告書を提出せず、所得税の確定申告書の提出により住民税の申告書を提出したとみなされ、上場株式等の配当所得等について所得税と住民税で同じ課税方式が適用されてきました。

しかし改正により、所得税の確定申告書が提出されている場合でも、市町村民税の納税通知書が送達されるまでに、これらの上場株式等の配当等につき申告不要制度を選択する旨等の住民税の申告書を提出した場合、市町村長が納税者の選択により手続きを行うことが明確になりました。

1.具体例
納税者A(78歳)は、
(1)年金収入100万
(2)上場株式配当400万円(内、源泉所得税612,600円、地方税200,000円)を29年中に受け取っています。
(所得控除は、寡婦控除27万円、基礎控除38万円のみとします。)

●所得税の申告は、源泉所得税の還付を受けるため総合課税で申告します。
【雑所得の金額】    年金収入100万円 - 公的年金控除120万円=所得なし
【配当所得の金額】   配当収入400万円
合計所得金額        400万円
【所得控除の合計額】     65万円
【課税される所得金額】     335万円
【上記に対する税額】  24万2,500円
【配当控除】         ▲ 40万円
【所得・復興税額】          0円
【源泉所得税の金額】    61万2,600円
【還付される金額】     61万2,600円
結果として所得税は、全額還付となります。

●住民税の申告では、申告不要制度を適用します。
【雑所得の金額】   年金収入100万円 - 公的年金控除120万円=所得なし
【配当所得の金額】 申告不要制度を適用 0円
結果として住民税は、均等割りのみの課税となります。

2.一方、上記具体例について、住民税を総合課税で申告した場合は、均等割りの金額に加え、所得割の金額29,000円が課税されます。
<計算式>
・(配当収入400万円-住民税所得控除額合計59万円)×10%=341,000円。
・配当控除(2.8%)の112,000円を差し引くと、229,000円が税金として計算される。
・この金額から、源泉徴収された地方税200,000円を差し引いた金額29,000円が所得割の金額となります。

※このように、所得税と住民税で異なる配当所得の課税方式を適用することで、節税(この例では29,000円)となる場合があります。

※国民健康保険、高額医療費等は住民税所得割額で金額が決定されます。配当所得を申告する、しないで所得(上記の例では0円か341万円)に違いがあるため国民健康保険・保育料・高額療養費にも影響がありますので、注意が必要です。

3.さらに、Aさんに同居の息子Bさんがいらっしゃった場合には、住民税の申告では、AさんをBさん(Bさんの所得税の申告ではAさんが38万円以上の所得があるため扶養親族に入れてなくても)の同居老人扶養親族で申告することもできます。

手続きは、所得税と異なる課税方式を選択する場合、住民税申告書にて申告することになります。(注意:住民税申告書のご提出がない場合は、所得税と同様の課税方式が適用となります。)
(1)Aさん、Bさんともに所得税の申告書を提出する。
その後、
(2)住民税の税額通知書・納税通知書が送達される日までに、Aさん、Bさんともに市民税・県民税申告書を提出する
以上の手続きをすることで、住民税の課税方式(申告不要制度)を選択したことになります。
所得税の申告後速やかに住民税の申告書も作成し、提出しておくと安心です。

ご不明な点がございましたら、お気軽にコンパッソ税理士法人までご相談下さい。

参考文献:「よくわかる!すぐわかる!29年度税制改正のポイント」TKC出版 今仲清・坪多昌子・畑中孝介
「上尾市ホームページ 上場株式の譲渡所得や配当所得がある方へ」
「図解地方税 平成29年版」 大蔵財務協会