「ふるさと納税」光りと影 税収の偏在と希薄化

最近のお客様との話題から
~ 「ふるさと納税」光りと影 税収の偏在と希薄化~  代表社員 丹羽 篤

 

ご存じの通り「ふるさと納税」とは、自治体への寄付金から2千円を控除した額が、国への所得税・地方への住民税から減額される制度です。
2016年度の寄付金額は2844億円、この制度開始の2008年の実に35倍にもなっています。
筆者が目にした申告書でも315万円を筆頭に100万円以上の寄付をされた方が12名いらっしゃいました。
ある意味で税金を使った自治体によるネット通販は、何をもたらしたのでしょうか?

ふるさと寄附金額の上位御三家は、

1宮崎県都城市 73.3億円  宮崎牛や焼酎

2長野県伊那市 72.0億円  ダイソンやパナソニックの家電製品

3静岡県焼津市 51.2億円  海産物

なんと通常の市の税収より、ふるさと納税の寄付額の合計の方が多かった自治体が20に及ぶそうです。
その反面、ふるさと納税をした人の17年度(住民税は寄付した年の翌年で控除)で控除される個人住民税の額は、前年より76%増え1766億円になりました。
受け入れたふるさと寄付金より控除額が大きい「流失超過」自治体は462自治体に上り、全体の4分の1を超えています。

流失超過自治体の上位三地域は、

1.横浜市     55.5億円
2.名古屋市    31.8億円
3.東京都世田谷区 30.7億円

ふるさと納税の拡大が都市財政を圧迫する構造が顕著です。(参考までにふるさと納税の赤字額の75%は地方交付税で補てんされます。ただし交付税を受け取らない23区や川崎市は全額減収です。)こんな状況を受けて、いびつな都市間の返礼品競争が加熱する事態も懸念されます。

さらに問題を複雑にしているのが、返礼品の調達コストや管理の事務経費等の増加率(85%)が寄付金の伸び率(72%)を上回り、コストが寄付額の50%を超えていることです。
先の都城市では返礼品の調達コストや送料・事務費用などを控除すると、手元には22%(16億円)ほどしか残らない計算です。寄付より経費が高い自治体も4市町村ありました。

1.大多喜町(千葉)  経費率 243%

2.井手町(京都)       212%

3.田舎館村(青森)      149%

4.柏原市(大阪)       113%

<都県単位では>
1.東京都  466億円

2.神奈川県 187億円

3.千葉県   98億円

 

このようにふるさと納税の加熱によるひずみが明らかになるにつれ、総務省は返戻率を3割以下、家電や商品券などの資産性の高い高額返礼品等の自粛要請等を出してきました。そのためバブル的なふるさと納税とその獲得競争には、一定の歯止めが効いてきたようです。

ただしふるさと納税の目的である地域振興、税金の使い道を納税者が自ら選ぶという新しさ、寄付金本来の文化を根付かせること、そのような趣旨に添った提案に自治体は今後も知恵を絞ってほしいものです。

熊本地震や糸魚川の大火被災地へは、通常の税収の6倍以上の寄付金が集まり、困窮子育て世代への食品の配布、青梅マラソンへの出場権、熊本城の修復を指定した寄付、児童養護施設を巣立つ若者への学費支援など、そして従来からの地域産品の提供はもちろん誤りではありません。自治体自らが積極的にその使途を明らかにして、制度の定着・発展を図って欲しいものです。

 

ふるさと納税の手続き方法など、コンパッソ税理士法人へお気軽におたずねください。