
経営者が学ぶ古典 ~「韓非子」と「論語」~
中国における古典に「論語」というものがあり、経営者がこれを参考に組織論を考えているが、これとは対照的な「韓非子」という古典が、現代の「論語」における組織論の解決策として、読まれている。
人は組織の中に属しながら生計を立てている。きちんとした組織に入ったなら、個々の成員の和以上のことが成し遂げられる。このため「うまく機能する組織」「成員が幸せになる組織」「組織内で活躍できる」がどの時代でもクローズアップされる。
論語と韓非子の違い
【人の在り方】
論語 志が大切だ
韓非子 所詮人間は利益に目がくらむ
【上下関係】
論語 上司と部下は敬意を持った関係であるべき
韓非子 足を引っ張りあっているのが常態である
【法やルールに対する態度】
論語 法やルールに頼るのはまずい
韓非子 法やルールこそ統治の基本
『論語』 ひとまず人を信用してかからないと、良き組織が作れるはずがない
『韓非子』人は信用できないから、人を裏切らせない仕組みを作らないと、機能する組織など作れない
①君主のお気に入りが必ずしも組織のためにはならない
現在でも繰り返されている問題。本人の実力や人望というより「社長や派閥のお気に入り」「腰巾着」「社長の近親者」といった要因で上司や権力者となった人の振る舞い。
人は置かれている状況によって良くも悪くもなる→ うわべを取り繕って組織を蝕む人物を本当に功績ある者の上に置いてしまう。
「論語」においては、よりよい組織を作るにはまず人を信用すべきだ
・人は生れながらの素質にそれほどの違いがあるわけではない。その後の習慣によって差がつく
・人は教育によって良くも悪くもなる。もとの違いはない。
②人の本性は弱さにある
財物に執着しないのは、人の数より財物が多かったから。争いに明け暮れるのは人の数より財物が少ないからだ。人が欲しがる財や地位が希少になるにつれ、二極化や争いは不可避になり過酷になる。
③権力の源泉の問題
トップが警戒すべき六つの「微」
1.権限を部下に貸し与えること
2.部下が外部の力をかりること
3.部下が似たことで騙そうとすること
4.部下が利害の対立につけ込むこと
5.内部に権力争いが起こること
6.敵の謀略や干渉に乗せられること
「論語」的な要因で崩落した企業を見事に立て直した経営者に共通するものは、「自分がやらなければ後がない」という覚悟の持ち方、腹のくくり方だった。また、成功している経営者の中には「この人は二重人格では」と思ってしまう二面性を持っている人が案外いる。「論語」的と「韓非子」的、両方を兼ねそなえているそう見えざるを得ないのであろう。だから組織をうまく回せる面がある。どんなに情があっても、人望も厚くても、問題や禍根が残っていれば、人が変わったように処断してしまう。そんな二面性があって、組織は健全に維持できる。
日本経済新聞出版社
組織サバイバルの教科書より
渋谷事務所 辻畑 真成