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命のサイン帳

 この度の東日本大震災にて被災された皆様に心よりお見舞いを申しあげます。1日も早い復興を心よりお祈り申しあげます。

サービス業に限らず、普段の人間関係を円滑にする上でも「目配り、気配り、心配り」の重要性が見直されていますが、
その「目配り、気配り、心配り」=「ホスピタリティ」で、多くの感動を生み、伝説を残しているディズニーランドで、
実際にあった伝説を1つご紹介します。

  ある日、ディズニーランドのインフォメーションに、
  お母さんが元気なさそうにやってきました。

  インフォメーションのキャストが、

    「いかがいたしましたか?」

  と聞いたところ、そのお母さんは、

    「実は今日、子供と一緒に来ました。

     子供が、ミッキーちゃんだとか、ミニーちゃんだとかのキャラクターに
     サインをしてほしいと言っていたので、サイン帳を持ってきたんです。

     子供は、キャラクターを見つけては、一人一人にサインを書いてもらっていました。
     そして、あと少しでそのサイン帳が全部埋まる、というところで、
     そのサイン帳を失くしてしまったのです。

     サイン帳、落し物で届けられていないかと思って来て見たんですが、ありませんか?」

  と言ったそうです。

  そのインフォメーションには、サイン帳は届けられていませんでした。

  そこで、そのキャストは、考えられるいろんなところに電話をしてみました。
  ところが、どこにも届けられていませんでした。

  そこで、そのキャストはサイン帳の特徴を詳しく聞いた後、

     「いつまでご滞在されますか?」

  と聞いたそうです。

  その家族は、2日後のお昼には帰らなければならなかったそうです。
  キャストはそれを聞いて

     「それでは、この後、もう少し探してみますので、
      2日後、お帰りになる前にもう一度こちらにお寄りいただけますか?」

  と言ったそうです。
  そして、お母さんが帰られた後、そのキャストは細かな部署に電話をかけて聞いてみたり、
  自分の足で、駐車場や心当たりのある場所に探しに行ったそうです。

  ところが、どうしても見つかりませんでした。

  で、そのキャストは、どうしたかと言うと、
  そのサイン帳と同じサイン帳を自分で買って、自分の足で、いろんな部署をまわって、
  キャラクターのサインを全部書いてもらって、当日を迎えたそうです。

  当日はお父さんがやってきました。
  多分ほとんど諦めていたと思います。
  キャストはお父さんに言いました。

     「申し訳ございませんでした。
      そのサイン帳は見つけることができませんでした。
      でも、お客様、こちらのサイン帳をお持ち帰り下さい。」

  お父さんがビックリして中を見ると、
  キャラクターのサインが全部書いてありました。

  お父さんは、もちろん大喜びして、

     「ありがとうございます!」

  と持って帰ったそうです。

  …で、この話はまだ終わらないのです。
  後日、ディズニーランドにそのお父さんから、一通の手紙が届きました。

     先日は「サイン帳」の件、ありがとうございました。
     実は、連れて来ていた息子は脳腫瘍で、
     「いつ死んでしまうかわからない」…そんな状態の時でした。

     息子は物心ついたときから、テレビを見ては、
     「パパ、ディズニーランドに連れて行ってね」
     「ディズニーランド行こうね」
     と、毎日のように言っていました。

     「もしかしたら、約束を果たせないかもしれない。」

     …そんなときでした。
     「どうしても息子をディズニーランドに連れて行ってあげたい。」

     と思い、命が、あと数日で終わってしまうかも
     知れないというときに、ムリを承知で、
     息子をディズニーランドに連れて行きました。

     その息子が夢にまで見ていた大切な「サイン帳」を落としてしまったのです。

     あの、ご用意頂いたサイン帳を息子に渡すと
     「パパ、あったんだね! パパありがとう!」
     と言って大喜びしました。

     そう言いながら息子は数日前に、息を引き取りました。

     死ぬ直前まで息子はそのサイン帳をながめては、
     「パパ、ディズニーランド楽しかったね! ありがとう!また、行こうね」

     と言いながら、サイン帳を胸に抱えたまま、永遠の眠りにつきました。

     もし、あなたがあの時、あのサイン帳を用意してくださらなかったら、
     息子はこんなにも安らかな眠りにはつけなかったと思います。

     私は、
     息子は「ディズニーランドの星」になったと思っています。

     あなたのおかげです。

     本当にありがとうございました。

  その手紙を読んだキャストは、その場で泣き崩れたそうです。

  もちろん、その男の子が死んでしまったという悲しみもあったと思いますが、
  「あの時に精一杯のことをしておいて、本当に良かった」
  という、安堵の涙だったのではないでしょうか

いかがでしょうか?
このキャストは誰に指示されたわけでもなく、その男の子とご両親に何とかしてあげたいとの一心で、
サイン帳を自ら用意したのです。
いざそうなった時、自分ではなかなか出来ない「心配り」ですが、その「心配り」が、結果として感動を生み、
ファンを増やしていくのだと思います。
今の自分を再点検させてくれる伝説の話です。

出典:矢島 実著「涙と感動が幸運を呼ぶ」
    比田井 和孝・美恵著「私が一番受けたいココロの授業」より

渋谷事務所 三上吉昭

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