
中小企業白書2010年版概要
今回は、先日中小企業庁より発表された中小企業白書2010年版の概要をお知らせします。
中小企業白書は、中小企業基本法第十一条に基づく年次報告書(法定白書)で、中小企業基本法が制定された1963年を初回として、
2010年版で47回目となります。
2010年版の副題は「ピンチを乗り越えて」。2部構成の第1部では、最近の中小企業の動向分析を行い、第2部では中小企業の
更なる発展の方策として、国内制約が高まる中での新たな展開および国外の成長機会の取り込みについて分析しています。
第1部 最近の中小企業の動向
第1章 内外経済の動向
○中小企業の業況は、持ち直しの動きがみられるが、業種・規模によってはその動きに違いがあり、デフレや円高など、先行きへのリスクがある。
○我が国の経済は、輸出を中心に着実に持ち直してきており、実質GDP成長率は、2009年4-6月期で+1.5%、7-9月で-0.1%、10-12月期で+0.9%。
第2章 中小企業の動向
○中小企業の業況は、持ち直しの動きが見られるが、その水準は依然として低い。
○中小製造業の生産は、輸送機械と電子部品関連で持ち直しているが、精密機械と一般機械関連で足踏み。
○経常利益は、2009年10-12月期に前年同期比で増加に転じているが、売上げ価格の下落要因が経常利益を押し下げ、人件費を削減せ
ざるを得ない状況が続く。
○中小製造業の設備投資は、2009年の当初計画及び修正計画ともに前年度実績比で約4割減であり、実績も大幅に減少することが予想される。
○失業率は高水準で推移、製造業、卸売業、建設業で依然として雇用の過剰感が強い。
第2部 中小企業の更なる発展の方策
第1章 国内制約が高まる中での新たな展開
○1986年から2006年までに、我が国有数の中小製造業集積である東京都大田区、静岡県浜松市、大阪府東大阪市では、事業所数及び
従業者数が2.5~4割減少。
○事業所数が減少する要因の一つとしては、自営業者の高齢化による廃業の増加が考えられる。50~60代の経営者は、約2割が「自分の代
で廃業したい」と回答。事業を引き継ぎたいと回答した企業も1割強が「後継者の確保が難しい」と回答しており、集積の維持・発展の
ためには、円滑な事業の引継が必要であると考えられる。
○エネルギー起源二酸化炭素排出量のうち、中小企業の排出量は12.6%を占める。
○我が国が世界ナンバーワンの環境・エネルギー大国を目指すためには、グリーン・イノベーションを推進することが必要であり、中小
企業の中にも、環境・エネルギー制約をチャンスととらえて、自社の技術やノウハウを活かして、省エネ支援事業に取り組む企業や地球
温暖化抑制に寄与する製品を研究開発する企業が存在する。
○総人口は2005年から減少し、2035年に2008年の約87%になると見込まれている。2008年から2035年にかけて、0-14歳人口は0.61倍、
15-64歳人口は0.76倍、65歳以上人口は1.32倍になると推計されている。
○少子高齢化時代に中小企業が新事業を展開して更なる成長を遂げていくためには、個人のライフステージに合った働き方を実現できる
ような場を提供することなどにより、女性や高齢者を始め、より多様な人材を確保していく必要がある。
○ワーク・ライフ・バランスの取り組みが高い中小企業は、低い中小企業と比較して、従業員の貢献意欲が高く、正社員・非正社員ともに
その定着率や生産性も向上したと回答する経営者が多い。
第2章 国外の成長機会の取り込み
○中小企業による輸出額や海外子会社の保有割合が上昇するなど、中小企業の国際化が進展しているが、特に小規模な企業では輸出や
直接投資を行う割合は低い。
○総じて、国際化企業は、非国際化企業より労働生産性が高い傾向にあるが、労働生産性は高いが、国際化していない企業が存在する。
○非国際化企業が国際化しない理由は、約6割が「必要性を感じない」、約3割が「国内業務で手一杯で考えられない」と回答。他方、
約3割が「国際業務に必要な知識がない」、約2割が「国内で国際業務に対応できる人材を確保できない」、「資金繰りが不十分・進出
資金を調達できない」と情報面や人材面、資金面における課題を挙げており、国際化前には、人材面や情報面、資金面での支援を
必要としていることが伺える。
○我が国の中小企業は、自らの強みを活かして、アジアを中心に増大する需要の増加を自らの成長に取り込んでいくことが必要である。
グラフや事例が多く分かりやすい白書になっていますので、是非全文もご覧ください。
中小企業白書 URL:http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/index.html
※PDF版はこちら