
中小企業におけるIT活用の今後2
前週の掲載で、中小企業のIT化の必要性と政府による取り組みについて触れました。今週はその掲載の中で取り上げられたSaaS・
ASPの有効性について具体的にご紹介したいと思います。
1.中小企業にとってのSaaS・ASPのメリット
SaaS・ASP型のサービスを利用するメリットとして以下の5点が挙げられています。
(1)インターネットに接続されたパソコンだけを用意すればよく、初期導入費用が大幅に低減されます。
(2)自前でITシステムを構築するのと比較して、導入までの時間が大幅に短縮できます。
(3)利用するシステムやデータ量に応じた課金であるため、利用料金がおおむね低コストとなります。
(4)ソフトウェアのアップデートやサーバ機器のメンテナンスなどの手間もかかりません。
(5)システムの管理は事業者側で行うため、IT専門要員が必要なくなります。
これらによりITの初期導入費用から人件費まで、IT投資の額は大幅に削減されることになると考えられます。
2.SaaS・ASPを使うだけで増収増益に結び付くのか?
IT投資のコストの問題を軽減するSaaS・ASPですが、残念ながら使うだけでは増収増益とはいかないようです。
(1)リスク
人事関係、会計関係について、かつてはSaaSを使っていたのですが、セキュリティ上の不安からパッケージソフトに移行しているという
事例があります。自社のデータを社外に置くことになりますので、セキュリティが十分かどうかという不安は避けて通れません。また、
システムが中断されずに信頼ある運用がされるか等も重要となってきます。
(2)活用する際の留意点
ITを有効活用するのに自社で必須な工程は何でしょうか。ITを活用している中小企業のうち、「情報システム運用にあわせた業務
プロセスの見直し」を行った企業ほどIT活用による効果が得られていると回答しています。特にSaaS・ASPは出来上がっている
ソフトウェアをそのまま使うので、自社の業務に適合するソフトウェアを選ばなければなりませんし、場合によっては自社の業務をソフト
ウェアにあてはめて変更する覚悟も必要です。
たとえば請求書発行ひとつを取っても、現状の請求書には何が記載されているか?誰が請求書を発行して、どのようにして取引先に
渡しているのか?入金の確認はどのようにしているのか?入金がない場合の請求書の再発行は?など、すべてを洗い出す必要があります。
譲れない機能は何でしょうか?検討中のソフトウェアは使えそうですか?
3.終わりに
業績を伸ばしていくためにITは避けがたい要素であり、SaaS・ASPという選択は中小企業のIT化の助けになり得るという
ことについて2週にわたり触れてまいりました。リスクや活用の不安点も挙げましたが、構える必要はありません。IT化の入り口として
手軽に試せるのがSaaS・ASPの利点です。何か始めたいと思ったら、弊社の巡回担当者にお声掛けいただくのも一つです。お客様の
業務・経営状況に精通している立場として何かしらお役に立てるでしょう。ご相談いただければ、お客様に役立つ情報を提供してまいり
ます。
※次回の掲載時(11月)はSaaS・ASPと中小企業経営についてさらに研究します。
参考文献:
『2008年版中小企業白書』『クラウド時代の中小企業経営―SaaSをはじめよう!』((独)中小企業基盤整備機構同友館)
『図解 クラウド早わかり』(八子知礼著 中経出版)
J-SaaS:http://www.j-saas.jp/
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