中小企業におけるIT活用の今後

皆さまの会社ではITを活用できていますか?

 会計事務所の助言・指導で財務・会計のソフトウェアは使っているけれども、その他はお金がかかりそうなうえ、どのような場面で

ITを使えばいいのかよくわからない・・・という方はいらっしゃらないでしょうか? また、高価なサーバを購入し、自社システムを

構築したけれども、使いこなせなかったという苦い経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか?

 2008年版中小企業白書によりますと、中小企業のうち、ITの活用やITへの投資を経営の重要課題と位置付けている企業ほど

増収増益傾向にある一方、大企業に比べて中小企業におけるITの導入割合は低い傾向にあるのです。ITの活用が進まない原因として、

経営者や社員のIT活用能力の不足と、IT投資のコストの問題があります。ここでは、主にIT投資のコストの問題を軽減しつつ、

ITを積極活用できる方法について2週にわたって見ていきたいと思います。

1.ITでどんなことができるのか?

 ITと一口に言いますが、どのような業務にITを導入しているのでしょうか?

 大企業、中小企業ともにトップは「財務・会計」です。続いて、「人事・給与管理」、「販売」、「社内の情報共有」と続きます。

営業支援システムを活用することにより、商談の進捗に応じて、次に必要となる行動を自動的に担当者に通知する仕組みを構築した

企業や、自社ホームページの作成検索エンジン最適化対策(SEO)により新たな需要の取り込みを目指す企業もあります。

2.IT活用でどのような効果が得られるのか?

 IT活用により得られている効果として、「業務プロセスの合理化」、「生産性の向上」、「コストの削減」を大企業、中小企業

ともに上位に挙げています。また、これらには及びませんが、「新規顧客の獲得」や「売上の拡大」についても一定の効果が得られて

います。そして、やはりIT活用による効果が得られている企業では過去5年間において増収増益傾向にあるというデータがあります。

3.政府による中小企業IT活用促進策の経緯

 政府は「経済財政改革の基本方針2007」(2007年6月閣議決定)において、ITによる生産性向上のための成長力加速プログラム

として「ASP・SaaSの普及促進など中小企業のIT化の基盤を整備する」と明記しています。そして、2009年3月末より経済産業省

により「J-SaaS」サービスが開始されています。

 ここで、政府が普及促進しているASPSaaS、そしてJ-SaaSについてご説明したいと思います。

 ASPとはApplication Service Provider(アプリケーションをサービスとして提供する事業者)、SaaSとはSoftware as a

Service(サービスとしてのソフトウェア)の頭文字をとった略語です。

従来は、企業の規模やIT利用の目的に応じて、パソコンに市販のソフトウェアをインストールしたり、自社の業務にあわせて独自の

ソフトウェアを開発して利用していました。入力したデータや作成したファイルなども従来は社内にあるパソコンや、社内LANに接続

されたサーバのハードディスクに保存していました。SaaS・ASPでは、これらのソフトウェアがインターネットの向こうのサーバ

上にあり、パソコンや携帯などのWebブラウザを使って利用し、データもインターネット上のサーバに預けてしまう仕組みとなっています。

J-SaaSとは、経済産業省による、SaaS・ASP型のソフトウェアを提供するサービスです。適用対象企業は従業員20人以下の

小規模企業とされており、平成22年5月現在で19の分野が展開されています。これにより中小企業の業務の大部分のIT化をカバーする

ことができるでしょう。SaaS・ASP型のソフトウェアは世界中にあるのですが、J-SaaSで提供されているサービスは経済産業

省のお墨付きといえるかもしれません。

ところで、SaaS・ASPに関連した言葉として、「クラウドコンピューティング」があります。クラウドコンピューティングとは

これまで各々のパソコンで行っていた様々な情報処理をインターネットの向こうにある他人のコンピュータに任せる技術です。この言葉

自体は、インターネットのイメージを表現するときに雲型のイラストを用いること、サーバが物理的にどこにあるのかを意識する必要が

ない、すなわち「雲の上にあるようなイメージ」ということから使われるようになりました。

それでは、SaaS、ASP、クラウドコンピューティングという言葉の違いはなんでしょうか? 実は、各々の言葉について厳密な

定義はなく、あいまいに広まっているのが実状です。業界団体であるASPIC(ASP・SaaSインダストリ・コンソーシアム)は

ASPとSaaSは同一の定義であり、これらの概念について「特定および不特定ユーザーが必要とするシステム機能をネットワークを

通じて提供するサービス、あるいはサービスを提供するビジネスモデルのこと」と定義しています。また、クラウドコンピューティング

との関係については、SaaSはクラウドコンピューティングに包含されるものと言えます。クラウドコンピューティングの概念には

さらに開発環境(PaaS)やインフラ基盤(IaaS)なども包含しているのですが、ユーザーとしての立場であれば、SaaSと

クラウドコンピューティングはほぼ同義と考えても差し支えはないでしょう。

次週は、SaaS・ASPについて掘り下げたいと思います。

※ここでの中小企業とは従業員数300人以下の企業を指しております。

参考文献:
 『2008年版中小企業白書』
 『クラウド時代の中小企業経営―SaaSをはじめよう!』
                   ((独)中小企業基盤整備機構同友館)
 『図解 クラウド早わかり』(八子知礼著 中経出版)
  J-Saas:http://www.j-saas.jp/

川越事務所 石川 幸恵

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