
非居住者から相続した国外不動産の未償却残高
平成25年3月1日付で、東京国税局が「非居住者から相続した国外不動産の未償却残高」についての文書回答事例を公表しました。今回はその概要をご紹介します。
この事例は、米国に住んでいた被相続人(非居住者)から、米国にある賃貸用不動産を相続した居住者が、「被相続人から引き継ぐ減価償却費の累計額は0円であり、未償却残高は被相続人の取得価額となる」ことを税務当局に照会したことへの回答です。
これに対し東京国税局は、「被相続人の当該不動産の所有期間における償却費の累計額を計算し、取得価額から控除した残額を未償却残高とすることが相当である」と回答致しました。
「被相続人は非居住者であり、非居住者が必要経費に算入できる減価償却費は国内資産に係るものに限定されていたため、被相続人が米国の当該不動産における必要経費に算入した償却費は0円となる。そのため照会者は、被相続人から引き継ぐ償却費の累計額は0円であり、未償却残高は被相続人の取得価額となる」としました。(所令292 1-5)
所得税法では、減価償却費は経理の如何に関わらず強制的に必要経費に算入されるため、実際に償却費を必要経費に算入していなくても、未償却残高は取得価額から償却費累計額を控除した金額となります。そのため東京国税局は、被相続人が非居住者であり、償却費を実際に必要経費に算入していなかったとしても、当該不動産の未償却残高は、被相続人が当該不動産を所有していた期間における償却費の累計を計算し、取得価額から控除した額を未償却残高とすることが相当であるとしました。(所法49)
なお、仮に被相続人が米国での申告で当該不動産の償却費を計上していなくても、被相続人が償却費を必要経費に算入していたかは関係ないため、回答結果は変わらないようです。
また、減価償却費の経費算入については、法人と個人では対応が異なります。
法人税法では、減価償却限度額以内であれば、法人の任意で経費計上ができますが、個人では強制的に経費算入しなければなりません。つまり、法人においては、赤字の事業年度は減価償却費を計上しないで、黒字の事業年度に減価償却費を計上することにより利益調整をすることが可能ですが、個人ではそのようなことはできません。
法人と個人との間で税法上の不公平等があるように思えるのですが、みなさんはどう思いますか?
出典:週間税務通信 No.3257