
雪害に負けない!雑損控除で所得税の軽減を
早いもので平成26年も6月となりました。すっかり初夏の陽気となった今では信じられませんが、2月の雪、特に日常あまり雪が降らない地域での稀に見る大雪被害は本当に大変なものでした。被害に遭われた皆様には心よりお見舞い申し上げます。
さて、今回のような大雪に代表される災害等により資産に損害を受けた場合には、一定の金額を所得から控除することができます。これを雑損控除といいます。どのような場合に雑損控除の適用を受けられるのでしょうか?控除できる金額はいくらなのでしょうか?サラリーマンであるAさんの例を簡単に見ていきましょう。
例)サラリーマンのAさんは、2月の大雪で自宅のカーポートが全壊してしまいました。
Aさんの平成26年の給与所得の金額 : 350万円
Aさんの平成26年の給与所得以外の所得金額 : 0円
カーポートの損害直前の時価 : 45万円
カーポートの撤去費用 : 15万円
保険会社から受け取った保険金 : 20万円
Aさんは、果たして雑損控除を受けることができるのでしょうか?
<雑損控除の対象になる資産の要件>
下記1.及び2.の両方を満たしていなければなりません。
1.資産の所有者が次のいずれかであること
ア.納税者
イ.納税者と生計を一にする配偶者やその他の親族で、その年の総所得金額が38万円以下の者
2.生活に通常必要な住宅、家具、衣類などの資産であること
「生活に通常必要な資産」という言葉は、その人のライフスタイル等によって捉え方が変わりそうな曖昧な言葉に聞こえますが、雑損控除の判定をする上では、
ア.事業用の資産
イ.別荘などの保養等を目的で所有する不動産
ウ.書画、骨董、貴金属類で1個または1組の価額が30万円を超えるもの
などは対象外とされています。
Aさんは自宅のカーポートに損害を受けたことで自身の所得税の計算上で雑損控除の適用を受けようとしているため、上記1.と2.の両方を満たしており、雑損控除を受ける条件はクリアしていることになります。
<雑損控除として控除できる金額>
Aさんの例で計算してみましょう。
(手順1)まず、差引損失額を計算します。差引損失額は、次のように計算します。
差引損失額 = 損害金額 + 災害関連支出の金額 - 保険金などにより補填される金額
・「損害金額」とは、損害を受けた時の直前におけるその資産の時価を基にして計算した損害の額です。
・「災害関連支出の金額」とは、災害により滅失した住宅、家財などを取壊し又は除去するために支出した金額などを言います。
・「保険金などにより補てんされる金額」とは、災害などに関して受け取った保険金や損害賠償金などの金額です。
上記の式に当てはめますと、Aさんの差引損失額は、
カーポートの時価45万円 + 災害関連支出15万円 - 保険金20万円 = 40万円
となります。
(手順2)次に雑損控除として控除する金額の計算をします。控除金額は、次のうちいずれか多い方の金額です。
(1)差引損失額 - 総所得金額等 × 10%
(2)差引損失額のうち災害関連支出の金額 - 5万円
Aさんの場合には次のような計算結果となります。
(1)差引損失額40万円 - 総所得金額等350万円 × 10% = 5万円
(2)災害関連支出の金額15万円 - 5万円 = 10万円
よって、(1)<(2)となりますから、Aさんが雑損控除として所得から控除できる金額は、(2)の10万円となります。金額の計算が終われば、あとは確定申告をするのみです。
<雑損控除を受けるための手続き>
雑損控除を受けるには、確定申告書に雑損控除に関する事項を記載するとともに、災害関連支出の金額の領収を証する書類を添付するか、提示する必要があります。Aさんはこれらの書類を準備し、会社で年末調整をしてもらった源泉徴収票とともに確定申告書を提出すれば、所得税の還付を受けられることになります。
<まとめ>
今回は大雪の被害による雑損控除を簡単な例によって見てきましたが、台風や落雷、火災などによる損害や、盗難・横領による損害についても雑損控除は認められます。また、損失額が大きく、その年の所得金額から控除しきれない場合には、申告を要件に翌年以後3年間の損失を繰越して控除することもできます。他にも、災害により資産に甚大な被害を受けた場合には、雑損控除に代えて災害減免法による所得税の軽減免除を受けられる場合もあります。
万一の時のために保険に加入するなどして備えるのはもちろんですが、その万一のことが起きてしまった時には、今回ご紹介した雑損控除を活用していきましょう。
控除額の計算をする上で、損失に含めることができるものやできないものなど、今回ご紹介しきれなかった細かい規定があります。ご相談がございましたら、コンパッソ税理士法人までお気軽にお問合せ下さい。