
金定額購入システム(純金積立)の課税上の取扱い
ドル・ユーロ・円高とはいえ円と主要通貨の弱さ比べの傾向が加速しています。その中で、無国籍通貨としての金に注目が集まり、
史上最高値を更新しました。その金の購入方法としてのいわゆる純金積立と税金について考えてみたいと思います。
1.所得区分の判定
純金積立は継続的に取引を行っているとみなされますが、積立期間中における一部売却については売却が数年に一度、年1~2回の程度
であれば原則として、譲渡所得に該当すると思われます。ただし、営利を目的として継続的に行われた売買については雑所得、事業とし
て行っている場合は事業所得となります。
所得の区分については、個々の事案、売買の回数、売買金額など諸般の事情を総合的に勘案して判定することになりますので、最終的な
判断は所轄の税務署にお問い合わせください。
※給与所得者でそれ以外の収入がなく、年収2,000万円以下の人は同一年の雑所得の金額が20万円以下であれば申告の必要はありません。
2.所有期間の判定
譲渡所得に該当する場合、売却時点を基準に5年以内の取得が短期譲渡所得、5年超が長期譲渡所得になります。単価が変動する同一
品質の金地金を一定金額で毎日購入し、その同一品質のものの売却であるため、同一銘柄の有価証券の譲渡した場合の取得日の取扱に準じ
て、先に取得したものから順次売却したもの(先入先出法)として判定することができます。
○短期譲渡所得(保有期間5年以内)
課税対象となる譲渡所得の金額 = 金の譲渡益 + 同一年のその他の譲渡益 - 特別控除額50万円
○長期譲渡所得(保有期間5年超)
課税対象となる譲渡所得の金額 =(金の譲渡益 + 同一年のその他の譲渡益 - 特別控除額50万円)× 1/2
※譲渡益 = 譲渡価額 -( 取得費 + 譲渡費用 )
3.取得費等の計算方法
譲渡所得に該当する場合、純金積立により購入された金地金については、顧客別に管理されておらず、譲渡資産と取得資産が個別に
対応していないため、個別の取得価額により必要経費又は取得費を計算することは困難ですが、純金積立は同一品質である金地金を一定
金額で毎日購入しているため、これを売却する場合には2回以上にわたって取得した同一銘柄の有価証券の譲渡した場合に準じて総平均
に準ずる方法により算出することが出来ます。
※総平均法に準ずる方法
同一銘柄の株式等を2回以上にわたって購入し、その株式等の一部を譲渡した場合の取得費は、総平均法に準ずる方法(株式等をその
種類及び銘柄の異なるごとに区分して、その種類等の同じものについて次の算式により計算する方法を言います。)によって求めた1単位
当たりの価額を基に計算します。
(算式) (A+B)÷(C+D)= 1単位当たりの価額
A = 株式等を最初に購入した時(その後既にその株式等を譲渡している場合には、直前の譲渡の時)の購入価額の総額
B = 株式等を最初に購入した後(その後既にその株式等を譲渡している場合には、直前の譲渡の後)から今回の譲渡の時までの購入
価額の総額
C = Aに係る株式等の総数
D = Bに係る株式等の総数
4.損失が発生した場合
所得の区分に応じて損益通算することが出来ます。
金は価格の変動はあっても、価値がなくなることはないといわれており、不動産と違い登記の必要はありません。また保有していても
固定資産税は課税されません。
ポートフォリオに金を組み入れることで債権・株式等の信用リスクを軽減することが期待されているようです。
参考文献:『東京国税局 事前照会に対する文書回答事例 回答年月日 平成18年10月23日 国税庁 タックスアンサー №1466』