野球場の年間シート契約は交際費?

「失われた20年」といわれる長期にわたる低迷が顕著な日本経済を反映して、ここ数年の企業の交際費支出は一時期よりもかなり減少したとされています。そのような中で、平成25年度税制改正法において、交際費等の損金不算入制度における中小法人に係る損金算入の特例について、定額控限度額を800万円(改正前600万円)に引き上げ、定額控除限度額までの金額の損金不算入措置(改正前10%)が廃止されました。
昨今では一部で景気も回復の兆しをみせつつあるようですが、中小法人にとっても、また社会経済の全体にとっても、交際費の支出が与える影響は大きく、こうした交際費等についての税制により、有効な中小法人支援や経済対策になることが期待されています。
そこで今回は、交際費等をめぐる税務の否認トラブルや、問題になりやすい交際費隣接費用のなかから、具体的な事例を取り上げ、お話したいと思います。

事例  プロ野球の年間指定席を購入したB社長、交際費にならない理屈を考えているようです。

社長  : 今度コンパッソ球場のプロ野球年間シート契約をしますよ。

税理士 : 野球観戦ですね。素晴らしいではないですか。どんなご縁からそのようなお話になったのですか?

社長  : うちの会社で製造した清掃用ワックス材をおろしている清掃会社が、コンパッソ球場の清掃を一手に受注しましてね。そこからの要請で引き受け
       たんですよ。年間シートは、得意先や社内でほとんど配布する予定になりそうです。そうだ、先生にもあげるから、ご家族と一緒に行ってきて
       ください。

税理士 : それは嬉しいお話です。ところで年間シート契約の金額はどのくらいになりそうですか? 交際費になりそうなので。

社 長 : 年間で250万円なんです。これがまるまる交際費になると、かなり辛くなりますね。そうだ、直営小売店の販促で、店のポイントカード会員の中
       から抽選して、年間シートのチケットを配ったりもするから、広告宣伝費とかになりませんか? 年間シートには、1年を通して我が社の
       ネームプレートが入るとのことなので、看板替わりにもなりそうですが・・・。

交際費にならない広告宣伝費とは?
交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人がその得意先、仕入先、その他の事業に関係ある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類するために支出するものをいいます。
他方、不特定多数のものに対する宣伝的効果を意図するものは広告宣伝費の性質を有するものとされるため、例えば、自社の商品を購入する一般消費者を旅行に招待することをあらかじめ広告宣伝し、購入者を旅行に招待する場合の費用については交際費等に該当せず、広告宣伝費に該当します。
このように、支出の相手が「一般消費者」であるかどうかで、広告宣伝目的の有無を判断するのですが、ここで「一般消費者」とは、“物品の最終消費者でその消費を事業としない不特定多数の者”といえるでしょう。

“不特定多数”であることの意味
そうなると、【事例】で、法人が得意先に配布をするチケットに対応する支出分は、得意先という特定のものを相手にした野球観戦への招待であり、例外なく交際費等とされることになります。
また、社内の役員や従業員に配布をする分のそれについても、社内外を問わず広く交際費課税が行われる点、かつ役員や従業員の全員が野球観戦をするわけではない点からすると、福利厚生費ではなく交際費となるでしょう。
他方で、ポイントカード会員顧客の中から抽選をして、年間シートのチケットを配布するという社長の構想もありました。当選者に配布される分のボックス席チケットの支出額は、広告宣伝費に該当するでしょうか?
これは、こうした行為が“不特定多数の者”を相手にしたかどうかの問題となるでしょう。

年間シートに貼付された会社名は“広告宣伝物”?
ちなみに、下級審判判決ではありますが、年間シートの購入代金の広告宣伝費性をめぐっての裁判例が存在します。
裁判所の判断は、もっぱら取引先や従業員といった特定の者に入場券を提供して、野球を楽しんでもらうためにチケットを購入したものと認定したうえで、シート背面に社名が記載されていることについては広告宣伝も目的ではなく、専用席がここにあるという単なる目印にすぎず、不特定多数の者に対する会社の宣伝的効果を意図するものではないとして、納税者の主張を退けています。

<いつの時点の交際費等の額に参入されるか?>
【事例】では触れていませんが、年間シートのチケット代金の支出額について、いつの時点の交際費等の額に参入されるべきかの論点も気になるところです。この点、プロ野球興行主へのボックス席契約金の支払い時は単なる「前払金」であり、取引先への接待目的で無償配布がなされた時点が「接待等の行為があったとき」であり、この時点で交際費等の支出額に参入するのが妥当となるでしょう。

以上、事例をもとに交際費等をめぐる税務上の扱いについてご紹介しました。交際費等につきましてご不明点等ございましたら、コンパッソ税理士法人までお気軽にご相談下さい。

出典:月刊「税理」

渋谷事務所 印丸由希子

 

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