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組織再編事例~欠損金の取り扱いについて~

今回は、組織再編成における欠損金の取り扱いについてご紹介します。

国税庁が公表した「2010年度分税務統計から見た法人企業の実態調査」によると、法人数258万のうち、欠損法人は187万で、実に全体の72.8%の法人が赤字という、1951年分の調査開始以来過去最高の割合となりました。

不況が続く中、企業が組織の最適化を図る目的で、グループ内企業再編やグループの枠を超えたM&A等が急速に増加するものと考えられます。そのような中、繰越欠損金に係る税制が課税所得の算定に与える影響は非常に大きいものです。

欠損金の引継に関する2010年の報道ですが、ヤフー株式会社(以下「ヤフー」)によるソフトバンクIDCソリューションズ株式会社(以下「IDC」)の買収・合併をめぐる取引において、ヤフーはソフトバンクの傘下でクラウドサービス事業等を行っていたIDCをソフトバンクから450億円で買収した上で、IDCの吸収合併を行いました。その際IDCに繰越欠損金が約540億円あり、当該繰越欠損金をヤフーが引き継いでいるとのことです。この取引について、課税当局は、付帯税を含めて約265億円の更正処分を行ったと報じられています。当該事例は係争中のため結論は出ていませんが、今後の展開に注目が集まっています。

欠損金の取り扱いについては、適用時期を平成24年4月1日以後に開始する事業年度として、次の2点の改正が行われました。
(平成23年12月公布「経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律」)

1.繰越欠損金の繰越期間の伸長(法57(1)本文、58(1)本文)
繰越欠損金の繰越期間が7年から9年に伸長されました。

2.繰越欠損金の控除限度額の制限(法57(1)但し書き、(11)、58(1)但し書き、(6))
青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除制度における控除限度額について、その繰越控除をする事業年度の、繰越控除前の所得の金額の100%ではなく80%相当額に制限するものとされました。中小法人等については従来どおりであり、所得の金額の100%相当額が維持されます。

これらの改正は、東日本大震災からの復興財源の確保を図る一方で、中小法人等については手厚い改正となっているものです。

欠損金の取り扱い、特にその繰越期間については、その時代における社会状況や経済環境により、種々の改正が行われてきました。
今後、多様化・複雑化する組織再編成における欠損金の取り扱いについて、随時改正が行われていくものと思います。正確な情報把握と理解に努める必要があると考えています。
欠損金の取り扱いについて何かご不明点・ご相談等ございましたら、コンパッソグループまでお問い合わせ下さい。

出典:国税庁「平成23年度 法人税関係法令の改正概要」

渋谷事務所 舟久保明男

 

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